スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第57回 株式会社FUSAコーポレーション」


皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第57回は、54回に続き千葉県市原市にある株式会社FUSAコーポレーションの代表取締役、諏訪 寿一氏にお話をお聞きしました!

地元千葉県を愛し、千葉県産の食材を使った特産品やお土産品を扱う「房の駅」を県内外に展開し、グループ全体で千葉の名産品の小売、卸売、通販、製造まで行っている諏訪さん。
前回の記事では、経営戦略の根幹にある「データドリブン」についてお聞きしたため、その事業内容については詳しくお聞きできませんでした。

そこで今回、改めて千葉県へ突撃してお話を聞いてきました!
JR東日本おみやげグランプリ2022の菓子部門1位を獲得した、千葉県産のピーナツをキャラメルソースと焼き上げた美味しいフロランタンの「ピーナツクイーン」、同じく千葉県産ピーナツを丸ごとのせた焼き菓子の「ピーナツキング」は同グランプリ2020で金賞を受賞しているそう。



ピーナツをイチゴやショコラ、コーヒー、チーズなど、サクサク食感の様々なフレーバーでコーティングした「Enjoy Peanuts」は今年で10周年の人気商品。
勿論ピーナツだけでなく、自社農場の房の駅農場で生産した紅はるかを使った「妖精の干し芋」は、添加物不使用の手作りで甘くてしっとりしていてクセになる美味しさ!



製造の機能を担う小川屋味噌店の金山寺味噌や辛口調味みその金太郎味噌、諏訪さんもおすすめのピリ辛いわしなど、とにかく千葉県の美味しいものがたくさん!



観光土産品の卸売から始まり、M&Aを活用して戦略的に事業拡大をしてきたその軌跡に迫ります!


【諏訪商店グループ サイトリンク】
「房の駅」オフィシャルサイト

通販「房の駅」
株式会社やます
株式会社ナカダイ
株式会社小川屋味噌店
株式会社房の駅農場


お土産の卸売から小売への挑戦
〜「何かやらなくちゃいけない」〜

山口 諏訪さんは2代目とのことですが、入社時は今の業態とはかなり違ったのですか?

諏訪 そうですね。1996年に諏訪商店に入社したんですが、それまでは観光土産品の卸売をメインに、製造も少しやっていました。当日は今ほど「○○産」というのを全面に押し出す風潮ではなかったのもあり、色々な産地のものを千葉のお土産として売っていたという感じでしたね。

山口 それ以前は別の会社に勤められていたのですか?

諏訪 はい。大学卒業後は大手の食品卸会社に就職したんですが、2年程して学生時代から勉強していた中小企業診断士の資格が取得できたのと結婚したのをきっかけに帰ってきました。その頃、メインの卸売は頭打ちでなかなか売り上げが伸びない状態が続いていて、東京で始めたスーパーも足を引っ張っていたりと迷走していた時期でした。それで先代と言い合ってスーパーを撤退させたものの、その分新しく何かをやらなくちゃいけない。ちょうどそんな時に、君津のドライブインでテナントを出すお話をいただいたんです。

山口 それはいいタイミングでしたね。

諏訪 それで自分で店長をやって出店したんですが、私自身卸しかやったことがなかったので最初はもう大変でした。部下は全員年上だし、卸と小売では根本のDNAから違うんですよ。卸だから商品を持って行って並べたり、商談するのが仕事だと思っていて、店に出て自分がレジ打ったり、販促のためにポップを作ったりといったことがなかなか理解されない。跡取りが入ってきたということで金融機関からのプレッシャーも強いし、今もう1回経験しろって言われたら絶対嫌ですね(笑)。

山口 若いがゆえに体当たりでできた部分もあったかもしれないですね。

諏訪 本当そうです。でも大変だった一方で、割と上手くいったんです。というのも、97年に東京アクアラインが開通するんですよ。

山口 なるほど、関東からのアクセスが良くなってお土産品の需要も一気に増加したんですね。

諏訪 海ほたるにも商品を卸していたので、一気に3割ぐらい売上が増えましたね。まさに神風が吹いたという感じでした。

千葉の「おいしい」を届ける房の駅


諏訪 といっても神風自体は一時的なもので、去ってしまえば売上もまた下がってしまいます。それでも凄い経常利益がぼんと出たことで信用力が出るじゃないですか。それで、その間に新規事業を進めるために第二営業部や通信販売部なんかを作っていって、5年後の2002年に、千葉県産の美味しいものにこだわった「房の駅(ふさのえき)」をオープンしました。千葉県は上総(かずさ)・下総(しもうさ)・安房(あわ)で総の国(ふさの国)と言いますよね。房総の房も「ふさ」と読むんです。それで房の字で「房の駅」という名前にしました。これも縁に恵まれて、ずっといい立地だなと思って見ていた土地の地主さんが、同行営業していたメーカーの方の知り合いで直接紹介してもらえたんです。最初は田んぼだったのが埋め立てられて更地になっても1年くらい何もできてなくて、それで「出店させてください」とお願いしたら、「いいですよ」と。

山口 え、じゃあ初の自店舗出店で更地からのスタートだったんですか?

諏訪 そうなんです。建物を建てるにしてもどのぐらいの面積にしたら良いのかとか何もわからない。それで何となく図面引いて、アイテム数はこれぐらい、面積はこれぐらい、通りの数、人口、商圏は・・・と市場調査全部やって。中小企業診断士の資格を持っていたので、何となく知識は持っていたのが良かったですね。でも私は翌年社長に就任することが決まっていたので、店長を兼任するわけにもいかないということで、当時スーパーの会社で幹部生として勤めていた弟を呼び戻して店長になってもらいました。

山口 幹部生ということは、もともと家業には戻らないつもりだったんですか。

諏訪 そう。先代もそれでOKしてしまっていたんですが、「お前は何も言ってないだろう」と言われて私が説得しに行きました。最後は「これはお兄ちゃんの命令だ」と言って(笑)。

山口 それでスーパーで小売をされていた弟さんに1店舗目を任されたんですね。

諏訪 そこで小売のDNAが入ったことは大きな違いでしたね。卸の人はなかなか小売はできないし、小売の人も卸はなかなかできないと思います。それでもやっぱり分からないことだらけですから、毎日がターニングポイントみたいな感じでしたね。相談しながら色んなことをやって、台車にお饅頭を乗せて「房の駅っていうのができますのでよろしくお願いします」とご近所中に配って歩いたこともあります。そしたら饅頭が貰えるってことでだんだん小学生がついてきちゃって、1日目は二人ぐらいだったのが、3日目には50人ぐらいになっちゃって(笑)。

山口 ハーメルンの笛吹きみたいですね(笑)。

諏訪 その後も弟と合宿してこれからどうするかを話し合ったりしながら2号店を出して、3号店からはノウハウも積めて大分楽になってきました。

ターゲットはあくまでも地元客
〜地元で愛されることが観光客を呼ぶ〜

山口 今、房の駅は何店舗あるんですか?

諏訪 16店舗になっています。2年に1店舗と思ってやっていたんですけど、それより早いペースで進んでいるのかな。今のところ撤退した店舗もほぼないので。

山口 すごいですね!新店舗を出す時の基準とかはあるんですか?

諏訪 大きい店舗とショッピングセンター等の小さい店舗とあるんですが、大きい店舗の方は高速道路や国道に出る道路、周囲に団地を抱えているかは強く意識しています。それと地元の野菜も調達しなくてはならないので、あまり都会でもいけない。田舎もあって、人口もあって、通りがあってと選んでいくと、千葉県の中でもそういう場所ってあんまりないので、自ずと場所も決まってきますね。そもそも房の駅は、観光客はあくまでもサブターゲットで、メインは地元のお客さんなんです。お土産品の自家消費ですよね。

山口 でも、最初に小売を始めたドライブインは観光客がターゲットですよね。

諏訪 はい、主に観光バスをあてにした業態です。そうなると、バスの運転手やバスガイド、エージェントの人たちとのコネが重要になるので、結構な費用もかかるわけですよ。それが嫌だなと思って、房の駅を出す時には観光バスは入れないと決めたんです。その代わり地元のお客さんにたくさん来てもらって、それを見た観光のお客さんに「あれなんだろう」と思って来てもらえればOKだろうと。

山口 確かに今って旅先でお店を探す時なんかも、観光客向けのお店ではなく、「地元で人気」とか「地元民に愛されている」といったお店を選ぶ人が多かったりしますよね。じゃあ、それを最初からコンセプトに据えられていたんですね。

M&Aで事業拡大
〜頭打ちだった卸売、メーカー機能も強化〜

山口 前回の取材でM&Aで事業を拡大されているというのをお聞きしましたが、それはいつ頃から何ですか?

諏訪 最初のM&Aは2009年ですね。得意先だったナカダイという会社がもう辞めるというので、うちに買ってくれという話がきました。そこは千葉県外に美味しい商品を売っている卸売会社で、うちは県内がメインでしたので、県外へも卸をするためにM&Aしました。卸先は品質に厳しい生協が多かったので、とても鍛えられましたね。売上で言うと当初2億くらいの会社だったのですが、今は20億を超えています。

山口 凄いですね!房の駅で新たな小売事業を拡げつつ、ナカダイとのM&Aで入社当時は頭打ち状態だった卸売事業も強化されたんですね。

諏訪 その後、2016年に金山寺味噌を製造している小川屋味噌店をM&Aしました。というのも、これからの時代、小売と卸だけでなくもっと強いメーカー機能を持たなくてはいけないと考えていました。先代の頃から少ないながらも製造はやっていましたし、自分たちのPBとして商品を開発するというDNAはありましたから。それで、煮炊きができるウェット工場とパッキングをするドライ工場を作ろうとしていたところ、小川屋味噌店のM&Aの話が来て見に行ったんですよ。そうしたら、欲しいと思っていた機能が全部あったんです。

山口 と言いますと?

諏訪 まず味噌の醸造って結構技術が高いんです。さらに金山寺味噌はそれだけじゃなく、もろみにナスなどの漬け込まれた野菜も混ぜて熟成されているんです。そのため野菜をカットする野菜処理室があり、発酵室があり、加工する機械があり、パッキングすることもできるわけです。ここの技術があれば、他のものを作るのも簡単だろうなと。2009年に先代が始めた農業を色々あって「房の駅農場」として法人化していたので、小川屋味噌店があれば房の駅農場とも繋がるし、当然房の駅とも卸売とも繋がるから絶対やろうと思いました。

山口 農場があって、販売先があって、その間を繋ぐ製造工程が一つの工場に全て揃っていたんですね。

諏訪 実際に今作っているのは味噌だけでなく、佃煮や漬物、瓶物、甘酒など色々作っています。工場を三つ四つ買うのと同じぐらいの価値があったと思っています。2019年には佃煮メーカーをM&Aし、事業合併して工場を大きくしました。

山口 これでメーカーとしての機能も大体揃えた感じですね。

諏訪 もう一つ、お菓子が無かったので「ピーナッツファクトリー」というピーナッツのお菓子を作る工場を昨年作りました。ここでは「ピーナッツクイーン」というお菓子を作って販売もしています。今うちで扱っている商品の2割くらいを自社で製造できていますね。一昨年はアーネスト・エフツーという会社のM&Aもしています。そこは牛乳配達屋さんに食品を卸していて、その販促用のチラシも作ってあげているという会社です。牛乳配達屋さんにそのチラシを持ってお客さんのところ回ってもらい、注文が取れれば牛乳配達屋さんも副次的な利益を出すことができるというビジネスモデルです。

山口 でも、今牛乳配達を取っている家庭って少なくないですか?

諏訪 それが意外と多いんですよ。300万世帯が取っているとも言われていて、15世帯に1世帯ぐらいは牛乳配達を取っていることになるんですかね。今物流を担う人手が足りないと問題になっている中で、このラストワンマイルの配送機能が欲しいなと思っていて、以前から牛乳配達に興味があったんです。それで牛乳業界にお近づきになれるかなという想いもあってM&Aしました。

山口 房の駅は通販もされていますが、さらに実際にエンドユーザーの手元まで配送するノウハウも備えようと。全てをすごく戦略的に繋げていっているのがわかります。

がんばらない効率化
〜キーワードは「ためない」「まとめない」〜


山口 こうしてお話を聞いていると、コロナ禍でもすごく能動的に動いてますよね。コロナの影響ってどんな感じだったんでしょう?

諏訪 観光の営業がやっぱり売上の2割ぐらいはあるので、そこは半分以下になりましたね。特に年末年始やお盆、ゴールデンウィークとかは極端に下がりました。でも2021年、2022年と少しずつ売上伸ばして、今年はコロナ前の売上を超えています。それこそ2020年5月と今年の5月では売上が倍以上違いますね。それでも、2020年も赤字にはしなかったんですよ。

山口 素晴らしいですね!

諏訪 コロナ前から作業の効率化やコスト削減はやろうとしていて、生産性のコンサルタントを招いて教えてもらったりしていたんです。それは製造の方だったんですが、卸売業も小売業も全部に適応できるなと思っていて、コロナ禍になってそれを社内で本格的に進めていきました。結果的にグループ全体で生産性が大きく改善されましたね。

山口 今年の6月に『がんばらない効率化』というタイトルで出版されてますね。どんな方法なんですか?

諏訪 例えば、10枚の皿を洗う時に、多くの人は全部洗剤で洗ってからまとめて水で流しますよね。でも、実際には一枚ずつ洗剤で洗って水で流してを繰り返す方が早いんです。ちょっと不思議なんですけど、そういう風に「ためない」「まとめない」という2つの要素を根幹にすることで、頑張らないで効率化ができるんです。それを一人の仕事だけじゃなく、人と一緒にやる作業や部門間での仕事にも取り入れて徹底したことで、うちはグループ会社8社の経理をたった1人が担当しています。

山口 それは凄い!グループ会社が8社あり、それぞれの事業が繋がっている中で、各社の資源を十分に活かしてシナジーを高めるためには効率化は重要ですね。

諏訪 この本も頑張らないで書いたんですよ。毎朝1時間、1500文字。その時に500文字しか書けなくても1時間以上書いちゃいけないし、逆にもうちょっと書きたいなと思ってもそこで辞めて、次の日のモチベーションに取っておく。それで60日で書きました。効率の悪い人は「夏休みの宿題」を毎日やっちゃってるんですよね。

山口 夏休みの最終日に宿題をまとめてやろうとする・・・。個人的に耳が痛いですね(笑)。

諏訪 今の時点から少しずつやっていけば大した事ではないのに、まとめてやるから大変だし頑張らなきゃいけないんです。社内でもまだ腹に落ちてないという人もいるんですが、あえて作業台を小さくしたりしてためにくい環境を作ることで大分変わったと思います。

今後の展望

山口 今後の展望なんかはありますか?

諏訪 色々あるんですが、まずは先ほど話したラストワンマイルを取りたいというのが一つ。他には、前回お話ししたデータ分析じゃないですが、すでにアプリを作ったりとか内製化してはいますが、もっと専門的にエンジニアが欲しいなと思っています。上手くいけばそういう会社と一緒になって、自社のデジタル事業として組んで行きたい。例えば、フードロスってお店や家庭内でのことは頻繁に話題になりますが、農家での生産段階でのフードロスってあまり考えられていないと思うんです。実際、柿にしても柚子にしても採られないまま落ちていることって結構あるんです。デジタルを使ってそれを集荷できるようにして、私たちが県外や海外から買っているものと代替していける仕組みを作りたいんですよね。

山口 それは面白いですね。

諏訪 それって力業でもできるんですけど、デジタルでコミュニケーションコストを下げることで上手く回るようになると思うんです。そういうのって他にも色々想像できて、そういうこともやっていきたいなと思っています。

山口 何年後かにまたお話を聞きにきたら、さらに面白いお話が聞けそうですね!本日はありがとうございました!


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