スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第54回 株式会社FUSAコーポレーション」

皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第54回は、千葉県市原市にある株式会社FUSAコーポレーションの代表取締役、諏訪 寿一氏にお話をお聞きしました!


地元千葉県を愛し、千葉県産の食材を使った特産品やお土産品を扱う「房の駅」を県内外に展開し、グループ全体で千葉の名産品の小売、卸売、通販、製造業まで行っている諏訪さん。
「食を通して千葉を日本一の観光地へ!」というスローガンのもと、隣接異業種で事業を拡大されてきたその経営戦略の根幹にあるのは「データドリブン」!
DX化の鍵を握るとも言われ、耳にしたことのある方も多いでしょう「データドリブン経営」。それは一体どういうものなのでしょうか?
実践されている諏訪さんに詳しくお話を聞いてみました!

【諏訪商店グループ サイトリンク】
「房の駅」オフィシャルサイト

通販「房の駅」
株式会社やます
株式会社ナカダイ
株式会社小川屋味噌店
株式会社房の駅農場


そもそもデータドリブンとは?


データドリブンとは、個人の経験や直感に頼らず、様々な種類の膨大なデータを収集し、その分析結果をもとにして意思決定を行う手法。そしてそれをビジネスの戦略や課題解決など企業経営に活用するのが、データドリブン経営です。
データを分析して活用するというプロセス自体はこれまでもデータ活用として多くの企業で行われてきました。しかし、市場の変化が速くなり、また不安定な現代では、単純に過去のデータを分析するだけは不十分です。また、AIやディープラーニングといったデジタル技術の発展からより膨大なデータから精度の高い分析を自動で行うことができるようになりました。
こうしたことから今、収集した膨大なデータから自動で未来予測や問題提起を行い、それをもとに意思決定を行うデータドリブンが注目されるようになっているのです。
とはいえ、何だか漠然としているのも事実。そこで、今回の記事では実践されているデータドリブン経営を実践している経営者にお話を伺いました。皆さんがそのイメージを掴むきっかけになればと思います。

「食を通して千葉を日本一の観光地へ!」
〜農業から小売、飲食、通販まで、隣接異業種で事業展開〜

山口 さて、今回はデータドリブン経営についてお話をお聞きしたいと思っていますが、まずは諏訪さんの事業についてお聞かせいただけますか。

諏訪 当社は先代である父が1972年に創業し、千葉県のお土産品の卸売業から始まりました。私が入社したのは1996年で、そこから小売業に進出しまして、「房の駅」という千葉の特産品などを販売するお店を15店舗ぐらいやっています。房の駅には併設している食堂やカフェ、サラダレストランなどもあります。2009年には農業にも参入しまして、「房の駅農場」という農場で千葉県産の紅はるかの干し芋を作ったり、いちご狩りなんかもしています。



山口 房の駅で販売するものを自社でも作られているんですね。

諏訪 はい。2016年に小川屋味噌店という金山寺味噌の老舗をM&Aしまして、そこは金山寺味噌の他に漬物や佃煮、醸造系、甘酒など日本食っぽいものはだいたい作れるようにしています。ここは佃煮の工場をM&Aして、小川屋に事業合併させています。一昨年はアーネスト・エフツーという会社をM&Aしました。そこは牛乳配達屋さんに食品を供給している会社で、牛乳配達屋さんの代わりに私たちがチラシを企画・制作して、そこに当社の商品も載せて販売してもらうという業態ですね。今年の2月には、香取市にある風土村という産直の直売所をやっている会社をM&Aしました。農業から小売、飲食、通販まで縦にラインが繋がっているような形になっています。

山口 千葉の美味しい物を中心に、一貫して事業を展開されているんですね。

諏訪 そうですね。ナカダイという卸売業の会社もM&Aしてまして、そこは千葉県産以外の面白い商品も取り扱って北野エースさんや成城石井さんなどちょっとアッパーなスーパーにも商品供給していますが、基本は千葉です。これらの展開はまさにスモサンで教わった山口先生の「隣接異業種」で、隣接と言えるところでしかやってきていないです。

山口 なるほど!M&Aを活用して隣接異業種への拡大をされているんですね。

諏訪 ナカダイは違いますが、大体どこの会社も再生型のM&Aです。一番安いところだと100円とかもありました。

山口 え!それはすごいですね。ということはM&Aの時点では、結構苦しい状況だったと思うんですが、そこは「ここをこうすれば再生できる」という確信があってM&Aされたんですか。

諏訪 そうですね。それこそデータドリブンではないですが、デューデリジェンス(M&A対象の会社や事業の実態を正確に把握するための事前調査)で分析などをしていくと再生の道筋が見えてくるんです。佃煮屋さんなんかは特にそうで、回帰分析などをしながら「うちがやれば再生できる」という考えはありました。

山口 なるほど。それはつまり、自社のデータを正確に分析して活かすことで飛躍できる会社も多くあるということですね。


経営戦略の根幹を支えるデータドリブン
〜自動でデータの分析から問題提起まで〜


山口 さて、今回の本題である「データドリブン」ですが、例えばどのような活用事例があるのでしょうか?

諏訪 うーん、何か一つ「これです!」というものがあるわけではないので、これというお話もしにくいんですよね。

山口 確かに、何か特別なツールを入れて「こう活用しています」、「こう変わりました」というお話ではないですもんね。細いことで構いませんのでお話いただけますか?

諏訪 そうですね。例えば当社で扱っている商品数は3,000以上あるので、データが山ほどある中で特異なものを見つけるのって実際大変なんですよ。でも、それらのデータを自動で集計して特別な手法で回帰分析をすることで、ぽこんと変わった売れ方をしている商品が見えるわけです。2年前には、ある店舗で急に蜂蜜が突出して売れているというのが分かりました。その理由を皆で考えた結果、「コロナ禍で、みんな咳をするのを嫌がって蜂蜜を買ってるんじゃないか」という仮説に辿り着きました。それで全ての店舗で蜂蜜の品揃えを強化していったところ、多くの店舗で蜂蜜がポンポンと売れるようになりました。

山口 なるほど。

諏訪 飲食店では、例えばこの商品を注文してくれたお客様はこのサイドメニューを頼みやすいといった分析をもとにメニューにも工夫ができます。製造の方でも、何を何kg作った、どの作業を何時間やった、温度や湿度がどうといったデータを全て紙に記入していたのですが、全てデジタルで入力するようにしました。以前は更に日報も手書きで書いていたのですが、今は1回データを入力すれば自動でグラフ化され、日報もできて皆が見れる状態になります。

山口 生産現場でもデータが一元化されていて、それを元にどう行動するべきかが分かるようになっているんですね。

諏訪 卸売業の方では、データを元に商品に金・銀・銅という区分が付けられるようになっています。それぞれ細かい条件設定がしてあって、金商品は今売っていきたい商品で営業部が担当する。銀商品は粗利の改善が必要な商品で、これは商品開発本部が担う。銅商品はというと、もう止めるのか、まだ続けるのか、改善していくのか判断が必要な商品で、これは経営者層が検討する。といった風に常にデータで分かれていて、それを元に各担当が行動できるようになっています。どれだけデータを取ったところで皆でデータを見ているだけでは意味がない。そのデータから自分たちがどういう行動をしなくてはいけないのか、それが全部明確になるように意識しながら構築しています。こうしたデータは社内のポータルサイトで見れるようになっていて、全体で共有できるようにしています。

山口 なるほど。莫大なデータの集計から問題提起までが自動でされ、そこから人間が具体的な戦略や改善策を検討し実行していく。これを導入するとこう改善するというものではなく、経営戦略のベースとなるのがデータドリブンなんですね。

諏訪 そう、まさに根幹の部分です。

学ぶことの大切さ
〜仕組みを知ることが活用の第一歩〜

山口 こうしたデータドリブン経営というのはいつからされているのですか?

諏訪 特にいつからというのは無いんですよ。私が入社した時には、データ分析とか活用っていうのはあんまりされてなくて、何が一番売れているのかといったものも把握できていませんでした。それで最初はExcelで隙間潰し表というのを自動で作れるようにしたんです。縦列に商品を売上順に、横列にお得意先を売上順に並べて、一番売れている商品が一番売れているお得意先にちゃんと卸してあるかどうかを分かるようにして、左上を埋めていくようにすれば売上が上がっていくという。それをやったら5%ぐらいポンと売上が上がったんです。それが最初のきっかけですかね。

山口 それは自分で作られたんですか?

諏訪 詳しい友人に協力して作ってもらいました。その人は今でも一緒に分析会議をしてくれています。それが私が社長になるちょっと前の2000年頃で、そこからデータを使って色んなことを試すというのを20年以上やっています。月に一回データ分析会議をして、今ならBIツール(企業が持つ大量のデータを収集、分析、可視化し、経営判断や意思決定を活用するツール)というのがありますが、色々なツールを駆使しながら会社のことをデータで把握したりというのをやっていました。

山口 以前からそういったデータの活用に取り組まれていたんですね。社内での反応なんかはどうだったんですか?

諏訪 若造が何をやっているんだろう、という感じだったとは思います。でも私自身は特に意に介せずやっていましたね。ただ、やっていることはそれこそBIツールのような一般的なデータ分析だったんですが、ここ数年でやはり世の中がAIやディープラーニングといった方向に動き始めたのを感じてそうした勉強も始めました。2017年頃にサンフランシスコに行ってAmazon GOとかを見た時に、その仕組みは統計学が基本になっていて、そこからディープラーニングができたんだといった記事を読んで、そこから実際に1年間ぐらい統計学の勉強をして、それからディープラーニングについても体系的に学びたいと思ってディープラーニング協会がやっているG検定とE資格を勉強して取得しました。それで現在は売上予測や商品開発だったり、SNSのフォロワー数を増やす方法など色々なところで駆使しています。

山口 これG検定というのはジェネラリスト検定で、AIやディープラーニングをどう活用できるかといった活⽤リテラシー習得のための検定試験。E資格というのは、実際にディープラーニングを実装できるエンジニア資格なんですね。この両方を取られたんですか!?

諏訪 はい。E資格は実際に自分でコードを書ける必要があり、私のように50歳で取る人というのはあんまりいないですね。

山口 自ら学んで活用していくというのが素晴らしいですね!自分でエンジニア資格を取るまでいかなくても、自社で活用するためにその仕組みを理解するというのはとても重要だと思います。例えばシステムを外注するにしても、それがどういう手法でどんな目的のためのシステムかを理解しているといないとでは大違いだと思います。実際にぼんやりとした指示をすることでぼったくられてしまうようなケースもありますからね。こういった検定や資格があるのも知らなかったので面白いなと思いました。

諏訪 面白いですよ。山口さんもぜひどうですか(笑)

山口 G検定は興味ありますね!E資格は無理ですが(笑)今大人のリスキリングが奨励されているように、こういったことを学んでいくのはとても意味あることだなと感じます。本日は素晴らしいお話をありがとうございました!


この記事は公開記事です。会員登録いただくことですべての記事をご覧いただけます。

入会案内

ページの先頭へ