スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第53回 松岡製麺有限会社」

皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第53回は、広島県福山市にある松岡製麺有限会社の代表取締役、松岡宏高氏にお話をお聞きしました!


皆さん、ラーメンはお好きですか?
今回取材したのは業務用の生中華麺を専門に製造・販売している老舗の製麺会社さん。主に備後圏内の飲食店へ卸している松岡製麺さんですが、工場直販とオンラインストアでBtoCでの販売もされています。

メイン商品の尾道中華そばは背脂が入った濃い色の醤油ラーメンで、鶏ガラ出汁と魚介の和風出汁を合わせたこってり目のスープに、こだわりの中華麺がベストマッチ!
さらに商品ラインナップには、なんと歴史あるお寺と共同開発したミートフリーの「精進らーめん」も!

その麺へのこだわりと挑戦について詳しいお話を伺いました。
皆さん、記事もラーメンもご期待ください!!

【会社概要】
会社名:松岡製麺有限会社
代表取締役:松岡宏高
所在地:広島県福山市桜馬場町5-35
設立:創業1949年 設立1952年
従業員数:10名
事業内容:生中華麺の製造・販売、ラーメン店運営
オフィシャルサイト
https://matsuokaseimen.com/
松岡製麺オンラインストア
https://matsuokaseimen-store.com/



創業70年、こだわりの尾道中華そば!


山口 中華麺を中心に美味しい生麺を製造されている松岡製麺さんですが、基本的にはBtoBでの販売がメインなんですか?

松岡 今のところ、飲食店への卸が主軸で全体の6〜7割ぐらいですね。残りの3〜4割ぐらいが工場直売とオンライン通販です。

山口 私はオンラインストアで生麺の尾道中華そばを買わせていただいたのですが、本当に麺がすごく美味しいです!

松岡 ありがとうございます。国産の数種類の小麦粉をブレンドしていて、小麦本来の味や食感にこだわった配合になっています。小麦粉の配合と「かんすい」など色々な添加物の配合で、練りだけでいっても10種類以上の生麺があり、さらに平麺や角麺など細かく切り分けて様々なラーメンに合う麺を製造・販売しています。普通は粉を一種類しか使っていないところが多いので、これは当社のこだわりですね。
メインの商品は山口さんにも食べていただいた尾道中華そばの生地です。中華麺には小麦粉と水の割合に多加水と低加水というのがあって、簡単に言うと「かんすい」を多く入れるか、少なめに入れるか。例えば九州の博多ラーメンとかは低加水で硬い麺、関東から東北、北海道の方へ行くと多加水で軟らかい麺が多くなります。この辺りの中国地方はちょうどその中間ぐらいで、当社では創業から70年以上ずっと作り続けています。

山口 なるほど、あの麺の美味しさの理由がわかりました!硬すぎず柔らかすぎずのつるつるもちもち感と、こってり目のスープにも負けない、ちゃんとスープと麺の両方を楽しめる味に納得です。スープもこってりしているんだけどクドさがなくて、すごく美味しいんですよね。あれもオリジナルなんですか?

松岡 尾道ラーメンは背脂が入った色が濃いめの醤油を使ったラーメンで、ダブルスープと言ったらちょっと大げさですが、鶏ガラの出汁にいりこなど魚介の和風出汁を合わせています。当社の尾道中華そばのスープはPBのオリジナル商品で、スープ屋さんに「もっとああして欲しい」「こうして欲しい」というのを何回もお願いして、こだわって合わせてもらいましたね。

山口 だからあの美味しさなんですね。こってり系のラーメンがお好きな方には是非とも食べてみて欲しいです!


何でもできる製麺屋から生中華麺の特化型へと転換

山口 松岡さんは今三代目ですか?

松岡 はい。初代は私の祖父で、1949年の創業です。その前は満州でインテリアの仕事をしていたらしいのですが、戦後すぐの焼け野原ですから、商売をするなら食べる物が主流だろうと満州で食べ慣れたラーメンやうどんの麺を作って飲食店に卸す事業を始めたようです。

山口 うどんの麺もされてたんですね。

松岡 うどんはつい最近までやっていました。うどんや焼きそばなど自社で茹でて袋詰めして飲食店に持って行く感じですね。でもそれをやると製麺の機械の他にゆで釜の設備も持っていなくてはいけないし、忙しくて人も動けないようになってくる。「何でもできます」は聞こえは良いけど、やる側はやっぱりしんどいんですよね。それで15年ぐらい前からうどんや焼きそばの茹でものを縮小していって、生中華麺に特化していく方向に舵を切ってきました。茹でるという工程が一つ無くなることで、他に注力して生麺の種類を増やすこともできます。数年前にはゆで釜を取っ払ってしまって、より麺づくりにこだわれるよう新しい製麺の機械を導入しました。

山口 「麺だったらなんでもできます」というのがウリであったところから、特化することで「こんな美味しい生麺が作れます」というウリにシフトされたんですね。松岡さんが引き継がれてからの変革なのですか?

松岡 はい。私が父の後を継いでもう30年なので、少しずつ変えていって20年かかりましたね。その間にラーメンブームが起こったので中華麺が盛り上がっていったというのはありますが、焼きそばなどの茹でた中華麺もお好み焼き屋さんとかに随分売れていて、全体で生麺8割に対して2割ぐらいは茹で麺でした。その2割の売上げを作る道筋がないと、すっぱり止めることはできません。それで始めたのが工場直売とオンラインストアでの販売でした。

山口 現在は3〜4割ぐらいがBtoCとのことですので、しっかり茹で麺をカバーして成長してますね!

松岡 コロナ禍で一時は飲食店への卸がゼロになったのですが、その頃には随分認知されてきていたので、店が休んでいるからとうちに買いに来てもらえることもありました。今は飲食店の方も大分戻ってきましたが、工場直売は以前の倍ぐらいの売上げになっています。

山口 自分たちの強みを特化させるためにやってきたことが生きたんですね。素晴らしいです!

お寺コラボの「精進系ミートフリーらーめん」!



山口 もう一つお聞きしたい商品がありまして、「精進系ミートフリーらーめん」というコンセプトの『寺麺』『精進麺』というラーメンがありますよね。これ実際のお寺さんとのコラボなんですか?

松岡 はい、ここ2年ぐらいの新製品です。福山城の鬼門守護の寺として歴史のある弘宗寺と松岡製麺が共同で開発しました。そこの和尚さんが若い方で、「精進なラーメンってできんかね」と相談をされたんですよ。要するに肉や魚のエキスといったものが一切入っていない、野菜だけでできたラーメンを作れないかと。というのも、コロナが2年続いたでしょう。夏に檀家がお寺さんに集まって食事をして先祖供養をする法要があるんですが、コロナで集まることができないので、個々にお墓参りをしてお寺でお話をして帰ることになる。その時に、それを配りたいと言うんです。

山口 お寺や精進料理とらーめんって正直全くイメージが結びつかないので、このコラボはかなりインパクトありますよね。ストアの商品説明に「精進料理としてラーメンを食べたい方向けのラーメンです。」とあって凄く面白いと思いました。

松岡 実はその時にたまたま私もミートフリーのスープを研究していて、スープ屋さんとそういった相談をしている途中だったんです。それで、買ってくれるところがあるんだったら本格的にやってみようかと開発を進めることになりました。そうしてできたのが、動物性の食材を一切使用していないあっさりとした醤油スープの『精進麺』と、同じく動物性の食材を一切使用していないまろやかな豚骨風スープの『寺麺』です。

山口 私は生麺のものを食べさせていただいたのですが、これもまた美味しかったです!食べる前は正直物足りないんじゃないかなぁと想像していたんですが全然そんなことなくて、しっかりラーメンを食べたという満足感がありつつ、同時に罪悪感が少なくて有り難さすら感じました。

松岡 生麺タイプのものは北海道産小麦を100%使用しています。当社は生麺専門なので、乾麺タイプのものは知り合いの乾麺屋さんにお願いして、広島県産小麦を100%使用して作ってもらっています。お寺の法要や法事では日持ちする乾麺タイプの2食入りを随分使ってもらいました。地元の新聞にも取材していただいたりして、最初に相談をもらったお寺さんだけでなく、その仲間のお寺さんや、全く宗派の違うお寺さんからもご注文を頂いたりするようになりました。

山口 オンラインストアで気軽に買わせていただけるのも有り難いです。どちらも本当に美味しかったので、こってりしたラーメンがお好きな方は尾道中華そばを、あっさりと負担なくラーメンを食べたい方には寺麺、精進麺がオススメですね!


エディブルフラワーが美しい奇跡の「花パスタ」


松岡 今、また新しいことをやっていて、花びらを挟んだ花パスタというのもやり始めました。

山口 パスタに花、ですか?

松岡 以前から飲食店に生パスタは卸しているのですが、今回始めたのは生地の間にエディブルフラワーという食用の花を散りばめてサンドしたパスタ生地で、試験的に販売し始めたところですね。今取り扱ってくれている飲食店は、鳥取県のとっとり花回廊さんと、TOTTORI CHEESE GARDENさんの2店舗です。

山口
 押し花みたいでとても華やかですね!作るのも大変そうです。

松岡 めちゃくちゃ時間かかりますね。パスタ生地に手作業で綺麗に花を並べて挟んでプレスし、シート状で販売して、店舗側でメニューに合わせて好きな幅にカットして使用してもらいます。

山口 でも、なぜ鳥取なんですか?

松岡 鳥取県に株式会社エフ鳥取というエディブルフラワーの生産業者さんがいまして、「この花をパスタに挟んでほしい」という依頼があって共同開発したんです。手間のかかるものですから、なかなかやってくれるところが無かったんでしょうね。それで広島の知り合いを介して当社に話が来ました。実際開発には苦労しましたが、大変だ大変だと言いながらうちは楽しんでやっていますね。最初は生の花をもらったんですが、味はもちろん茹でた後の色の浮かび上がり方などにもこだわるとなかなか上手くいかず、それで今度は押し花にして乾燥したものを用意してもらって何とか形にすることができました。

山口 パスタで挟んであるのがそのまま押し花のイメージで、すごく可愛いですよね。

松岡 最初は少数店舗限定のプレミアム企画として開発したのですが、「購入できませんか」という問い合わせを多数いただいて一般の販売も始まるところです。

山口 私もぜひ食べてみたいです!今後は鳥取限定ではなく、全国へと期待が持てますね!

未来を見据えた今後のビジョン


山口 さらに今後の展開などはありますか?

松岡 今、4代目が新しい事業としてラーメン屋も始めています。お得意先の人気店があったのですが、ご主人が亡くなって店を閉めることになってしまい、そこを完全居抜きで引き継ぎました。と言うのも、以前から飲食店の開業支援塾みたいなのやりたいなと思っていたんです。「ラーメン屋をやりたい」という人の声はよく耳にするので、そう人を集めてサポートできるようにしたいんです。そのためのノウハウを集めるために実際にラーメン店をやってみようと。結局、BtoBのお店ってそう簡単に営業で取れるものではないので、店舗数自体を増やしていかないといけない。それに、営業で取れただけのお店では、「明日からもういいよ」と言われてしまえばそれまでです。うちでノウハウを教えてしっかりコミュニケーションを取っていけることが本業にとっても重要になってきます。

山口 麺だけではなく、経営ノウハウの提供もすることで本業に広がりを持たせる。

松岡 地域に無い味ってあるじゃないですか。大阪や京都など近畿圏でもまだ尾道ラーメンのないところってたくさんあると思うんです。うちの店舗は岡山にあるのですが、そこでラーメンの作り方や接客、経営など全部研修を行い、自分の地元に戻って開業してもらってその地域で尾道ラーメンの味というのが広がっていったら凄く面白いですよね。

山口 面白いしワクワクする取り組みですね!

松岡 それと、今は地元福山産の小麦粉作りというのも始めています。地元の農業関係の会社に小麦を栽培してもらって、その小麦粉を当社で全て買い取るというので、数年前から取り組み始めてこれからどんどん増やしていきたいと思っています。

山口 地元福山産小麦100%の中華そば、良いですね!

松岡 福山城が今年で築城400周年なので、何かそういった記念のものが作れたら良いなと思ったのが最初ですが、そうして小麦を作ってもらうのを広げていければ休耕地も減るじゃないですか。何もしなければ農家さんはどんどん減っていってしまいますから、これからはそういう取り組みもしていかなくてはいけないんじゃないかなと思っています。これはちょっと夢みたいなところもあって、10年ビジョンぐらいの感じで考えていることですね。

山口 こうしてお話をお聞きして、新しいことへの挑戦をとても前向きに取り組んでらっしゃるのを感じました。これからの挑戦もとても楽しみです。本日はありがとうございました!


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