スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第52回 真和建装株式会社」


皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第52回は、愛知県岡崎市にある真和建装株式会社の二代目社長、杉浦晴英氏にお話をお聞きしました!

皆さん、「シート建材」というのはご存知ですか?
天然石や天然木をリアルに再現したテクスチャーを持ち、外壁に貼ることで様々な建物を天然石や天然木の風格で演出することのできる画期的な建材です。真和建装はシート建材のパイオニアとして、1989年から「マハール」を製造、販売、施工を手掛け、薄く軽量で自由な形状に対応する柔軟性から施工性に優れるマハールは大手建設会社をはじめ日本全国で採用されています。

しかし、真和建装はもともと外壁の塗装屋として1966年に先代が創業。この画期的なシート建材のマハールは、一体どのようにして開発され、現在の全国展開にまで至ったのでしょうか?
その挑戦と二代にわたる想いについて詳しいお話を伺いました。
皆さん、ご期待ください!

【会社概要】
会社名:真和建装株式会社
代表取締役社長:杉浦晴英
所在地:
〒444-0232 愛知県岡崎市合歓木町字郷東144番地1
創業:昭和41年4月1日(1966年)
設立:昭和52年4月1日(1977年)
従業員数: 40名
事業内容:塗装工事、防水工事、断熱工事、内外装仕上げシート 建材「マハール」製造・販売・施工
真和建装株式会社オフィシャルサイトURL:
https://shinwakensou.com/
木目調・石調のシート建材「マハール」WebサイトURL:
https://shinwa-mahall.co.jp/

天然石・天然木のリアルな質感と高い施工性を持つシート建材『マハール』
〜高品質シート建材のパイオニア〜

山口 真和建装さんでは、マハールというシート建材を取り扱っているとのことですが、これはどういった製品なんでしょう?


杉浦 マハールは、天然石や天然木の風合い、質感を本物そっくりに再現した薄くて軽量なシート状の建材で、建物の外壁に使用することで手軽に天然石や天然木の美しい風格を実現することができる建材です。このシート建材はまだメジャーな存在ではなく、日本で扱っている会社は4、5社ほどしかありません。当社はそのパイオニアとして、1989年からシート建材「マハール」の製造・販売・施工を行なっています。

山口 どういった特徴があるんですか?

杉浦 第一は、その施工性の良さです。薄く軽量であることと、柔軟性があって曲がることから自由な形状に対応することができ、曲面や丸柱をも華美な雰囲気へと仕上げることができます。また、落下や剥がれ、そして汚れに強い建材なので、安心と安全に配慮されていることから施主や設計士の皆様に高い評価をいただき、日本全国の建物で採用して頂いています。その特性からどちらかと言えば新築よりもリニューアルでの外装工事に使用されるケースが多いですね。改修時に既存の下地に簡単な処理のみで施工できるため廃棄物の排出が少なく済みます。さらにカッターナイフなどで簡単に裁断加工できるため粉塵が出ることもなく、建物は勿論、人体や環境への負荷を心配する必要がありません。

山口 テクスチャーはどういった種類があるんでしょう?

杉浦 現在マハールで表現できるバリエーションは、ケンチ石調、こぶ出し石調、木目調、御影石ジェットバーナー調、インド砂岩調、たたき石調の6種類で全51色に及びます。2011年の震災以降タイルの剥落が問題になったことで、タイルに変わる建材を探している方が増えて、マハールのような軽く剥がれにくいシート建材が以前よりも注目されるようになってきました。

山口 リアルな質感と場所を選ばない柔軟性で、自由な設計による外装を実現することができるんですね。

創業は一人親方の塗装職人
〜幼少期から見てきた父の仕事〜

山口 杉浦さんは二代目とお聞きしていますが、ご創業はお父さまですか?

杉浦 はい。1966年創業で、私の父がペンキ職人から始めた会社です。父は絵描きになりたかったらしく東京に絵の修行に行っていたんですが、夢破れて地元で塗装業の修業を積んで、1年ほどで独立したようです。結婚してからは母も仕事を手伝いながら、杉浦塗装工芸という名前で一人親方の職人という形でやっていました。しかし、その頃の師匠のような方から「人を使わないと商売とは言えん」という話があったらしく、そこから一人増え、二人増えしながら塗装業を続け、10年ほど経って法人化した際に現在の真和建装株式会社にしたと聞いております。

山口 お母さまも手伝われていて、まさに家業という感じだったんですね。

杉浦 はい。実際、私が3歳とか4歳の頃、一緒に現場へ行って母と父がペンキを塗っているところを見ていました。今じゃ考えられないですが、それで現場で階段から落ちて怪我をしたという記憶もあるぐらいで、そのくらい幼い頃から「うちは塗装屋だ」という認識はありましたね。

山口 いつかは自分もこの仕事を手伝うんだみたいな。

杉浦 塗装に関わっていくんだろうなというイメージはありましたね、やっぱり。

内装の壁紙を見てシート建材の開発を決意
〜「外から来る前に、自分で開発してしまおう!」〜


山口 元々は完全に職人さんであったところから、建材の開発を始められたきっかけというのは何だったのですか?

杉浦 今どこの住宅にも壁紙って使われていますよね。

山口 え、そうですね。内装には当然壁紙が使われますね。

杉浦 でも、昔は内装もペンキを塗っていたんですよ。壁紙というものが無かったんです。ところが、ある会社が壁紙を開発したことで、内装での塗装という仕事が無くなっていったんです。うちは外壁塗装でしたが、当時それを見ていた父は「こういうものが外装にも出てきたら、我々の仕事を奪ってしまうのではないか」という危機感を抱きました。それで、実際に外からそういうものが来てしまう前に、こっちが開発してしまおうと思ったらしいです。

山口 なるほど。内装での壁紙という「改革」を見て、自分たちの業界でも同じことが起こる前に、むしろ自分たちで改革を起こしてしまおう、と。危機感からの発想が素晴らしいですね!

杉浦 当時私は小学校3年ぐらいだったのですが、仕事のない日曜日に夜遅くまで開発していた父の姿を覚えています。

山口 それまでずっと施工をされてきた中で、突然自分たちで製品を開発するというのは相当大変ですよね。しかも、今市場にないものを開発しようとしているわけですから。

杉浦 そこはやはり非常に大変でしたね。結局うちでは原料などを作れないので、そういった原料を調合してくれるところを一から地道にあたって、というのをずっとやっていったみたいです。色々なところに協力をお願いして、中には上手くいかずひっくり返されてしまうようなこともあったり、気の遠くなるような作業を何年もやり続けていましたね。会社が身近だったので、色々な方に協力していただいてよく飛び回っていた父の姿を私も見ていました。

山口 当時の社員さん達はどういった反応だったんでしょう?塗装する側だったところに、急に自分たちで建材のメーカーもやるとなるとリスクもありますし、かなり戸惑われたのではないかと思うのですが…。

杉浦 確かに最初は戸惑ったみたいです。工場を建てて設備を入れてと数億ほどの借金をすることになりますのでリスクも大きいですから。それでも、塗装は塗装で本業としてちゃんと守っていくという姿勢はずっとありましたので、新事業として建材を作るというのは賛成してもらえました。先代が当時の幹部たちにリスクがあることも説明して、「今後これをやって行きたいけど、上手くいかないかもしれない。どう思う?」と聞いたところ、「もし失敗した時は、また皆でペンキ塗ればいいんじゃないですか」と背中を押してもらったようです。

山口 信頼関係ですね。

杉浦 先代もそれで踏ん切りがついたと言っていましたね。

小さな塗装屋が開発した新製品を全国へ!
〜先代の“ロマン”を受け継ぎやりがいと誇りに〜



山口 杉浦さんがご入社されたのはいつ頃なんですか?

杉浦 私は高校を出てすぐ、平成3年に入社しました。シート建材のマハールは平成元年からの発売ですので、ちょうど社内に塗装部門とマハール部門というのができた頃でしたね。ただ私自身は、塗装部門の営業から入りましたのでマハールに携わるようになったのはもっとずっと後です。

山口 塗装の修行等はされずに営業からだったんですね。

杉浦 建設業は特殊な業界なので最初は大変でした。職人の世界なところがあって皆荒っぽいですし、理不尽な業界にちょっとびっくりしました。高校を出たばかりの18歳ですからね、毎日地獄だなと思いながら仕事していました。ただ、人間誰しも怒られたくないですから、少しでも怒られないように、失敗しないようにという思いでどんどん知恵がついて引き出しが増えていきました。やっぱり経験が一番糧になるので、そこは感謝していますね。

山口 マハール事業の方にも携わるようになったのはいつ頃なんですか?

杉浦 私は33歳で社長を引き継いだのですが、それから3、4年ほどするまでは先代が携わらせてくれませんでした。というのも、建材事業がずっと続くとは先代も思っていなかったみたいです。売上や利益といったものとは別に、どちらかと言うと地方の小さな一塗装屋が新製品を開発して全国で売っていくんだということに対して、夢やロマンみたいなものを追っかけていたという印象が強いですね。柱となる本業をきちっとやれないと会社は絶対にダメになると言って、建材の方はなかなかやらせてもらえませんでした。

山口 売上や利益には直結しなかった分野だったんですね。社長になって、逆にそこを縮小したりといったことは考えなかったのですか?

杉浦 実はですね、ある時期に先代からはマハール事業を止めようと思うと言われていたんです。

山口 えっ、そうだったんですか?

杉浦 でも、私は「絶対にやるべきだ」と答えました。こんな小さな会社が、自分たちで新しいものを開発して全国に売っていくなんてことに携われるのは二度とないチャンスです。今はダメかもしれないけど、自分の仕事をやっていく中で、そういうものがやりがいや誇りになる、これは続けるべきだって言ったんです。それで、そこから数年後に任せ始めてくれました。

山口 先代のロマンを受け継がれたんですね!


責任施工体制で北海道から石垣島まで!
〜自社製品を全国へ発信できることが社員の誇りにも〜



山口 そこから勢力的に営業されていったんですか?

杉浦 そうですね。塗装部門がカバーしているのは愛知県のほぼ全域なので、ここから全国を相手にするというのは自分の仕事としても、会社を経営していく上でもやはりとても魅力的です。全国を訪れてうちの商品が爪痕を残していくというのは、自分の生きがいにもなると感じました。

山口 実際に今、全国展開されてますよね!

杉浦 これまで大和ハウスや竹中工務店といった大手建設会社をはじめ日本全国で採用して頂いています。マンションや店舗、事務所、工場などが多いですが、当社のWebサイトを見て、自分の戸建て住宅にも使いたいと問い合わせをいただくこともあります。

山口 素晴らしいですね!マハールは施工も真和建装さんがされているんですか?

杉浦 責任施工体制をとっています。やはり建物の外部に貼るものなので、施工をちゃんとしないと後から剥がれてしまう危険性があります。そうして万が一剥がれてしまうと「この建材は剥がれて使えないぞ」という悪評が立ってしまうので、施工には当社が全部関わっています。東京には東部施工班が何人か行っていますし、代理店制度でしっかりと研修を受けていただいたグループ販社が全国にいて、北海道から石垣島まで責任をもって最後まで施工いたします。

山口 まさにロマンが現実になっていますね!先代が開発し、二代目がそのロマンを受け継いで成長させ、全国に拡げてきたんですね。今、事業としては二つの軸になっているのでしょうか?

杉浦 まだまだ塗装や防水の施工事業が半分以上ですが、年々じわじわと成長していて今は6対4にまで近づいています。また、工事部の人たちにとっても、一方で自分たちの製品を全国に向けて発信している会社だっていうことは誇りになっている感じはしますね。


あえて大きな戦略は取らず継続していく!
〜「永続企業」という目標〜

山口 年々成長してきている中で、ちょっとずつ軌道に乗り始めてきたなと感じたタイミングとかってありますか?

杉浦 2年前ぐらいから、今までとはちょっと売れ方が変わったなというのは感じています。それと、日本の建築で木目がちょっとブームになった影響も感じていますね。国立競技場のデザインに携わった隈研吾さんという建築家の先生がいるんですが、その人が木をかなり使い出したんですね。そこから流行になって、木目調のマハールが出る桁がこの4、5年で一気に変わってきました。インバウンド需要でホテルが増えた時には、ホテルの新築で使われることが増えました。リピーターでもホテルが圧倒的に多くなって、一度コロナで無くなっちゃいましたけど、今は少し再開し始めています。

山口 時代的な流れも追い風になってるんですね。そういったブームを足がかりに少しずつ知名度が上がることで、その後に続いて行きますもんね。今後の展開についてビジョンのようなものはありますか?

杉浦 まだまだ知名度が足りていない状態なので、そんな大きい戦略というのはないのですが、商品開発においては新しいテクスチャーだったり、例えば燃えにくいといった機能性のあるものを開発していきたいと考えています。正直そこのビジョンがちょっと弱いんですが、マハール事業がこれまで30年以上続いているのは、あまり大きく売れなかったことがプラスになっていると思っているんですよ。これがドカンと売れちゃっていたら多くの企業がどんどん参入してきたり、過剰な設備投資をしてしまったりで多分保たなかったと思うんですよね。なので、今でもそういった爆発力というのは要らないと思っていて、あくまでもスーパーニッチという感覚でじわじわと継続していくのがうちのやり方かと思っています。マハールだけではなく、当社自体に「永続企業」という目標がありますから。

山口 なるほど。あえてこう拡げ過ぎないというのも戦略的に考えていらっしゃるんですね。戦略としてどのぐらいのパワーバランスで事業を大きくしていくかというのも重要な方向性ですね。

杉浦 コロナの影響もあって前期はマハール事業が低迷したのですが、今期には復活していますので、その戦略に間違いは無かったと思っています。

山口 本日はとても興味深いお話をありがとうございました!


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