スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

「第46回 株式会社セイワ」

皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口恵里の“現場に行く!”」第46回は、株式会社セイワ代表取締役社長の加藤正和氏にお話をお聞きしました!


愛知県西尾市で精密切削加工を行っている株式会社セイワ。自動車部品の試作加工など下請けの仕事が中心である中、同社が生み出したのは、これまでに無かった“オブジェ”として飾れる“開梱ナイフ” 『OOPARTS-001』でした。

コロナ禍のピンチをチャンスと捉え、「自社製品の開発」という長年の目標へのチャレンジを決めた加藤さん。その背景には、「主体性のあるモノづくりへの挑戦」と「100%下請けからの脱却」を目指して社内で若手と結成した『チーム セイワ魂』の活動など、小さな一歩を積み重ねてきた熱い想いがありました。
皆さん、ご期待ください!

【会社概要】
名称:株式会社セイワ
所在地:〒445−0887 愛知県西尾市長縄町井ノ元10番地1
取締役会長:下谷七郎
代表取締役社長:加藤正和
従業員:65名
事業内容:自動車、機械部品の切削加工(試作品及び少量量産品、量産部品)機器組立
サイトURL http://www.seiwa-1.co.jp/

精密切削加工のモノづくり企業が生み出した
オブジェ×開梱ナイフ『OOPARTS-001』


山口 先日スモサンプレスリリースでも掲載させていただいた『OOPARTS-001(オーパーツゼロゼロイチ)』。こうして画像を見ると金属でできたお洒落な「オブジェ」という感じですが、実はこれ「開梱ナイフ」なんですよね。

加藤 はい、金属の塊から削り出された石器のような開梱ナイフ、それが『OOPARTS-001』です。昨年からのコロナ禍で通販を頼む機会が非常に多くなりましたが、届いた箱を開ける作業ってスマートじゃないんですよね。玄関で受け取って早く箱を開けたいと思っても、玄関先にカッターナイフやハサミを置いておくのはちょっと危険ですし、開梱ナイフは業務用のものが多いので、引き出しなどにしまいこんで必要な時に見つからないということもあります。そこで、普段はオブジェとして玄関に飾っておいていただけるような開梱ナイフを開発しました。生活に彩りを与え、届いた荷物を開けるという楽しみを演出できればと思っています。


山口 なぜ「石器」というモチーフなんですか?

加藤 当社は自動車や産業用ロボットの分野で、アルミニウムの精密切削加工を中心に、高品質な試作・少量生産を行っています。この「金属を削る」という我々の仕事の中で、金属を削ることによってどんな価値が提供できるのかを考えたときに、やはり金属という素材の持つ美しさを表現したいと思いました。そこで、古代の技術を現代にアップデートするという位置づけで石器をモチーフにしました。アルミの持つ美しさを表現するために塊から総切削し、その切削痕が文様の様に表面を覆い尽くして、そのまま刃先を形成するデザインとなっています。

山口 なるほど、石器が石からアルミへ、打製から切削加工へとアップデートされているんですね。

加藤 「OOPARTS」というのは「場違いな工芸品」という意味で、出土品などにおいて考古学上その成立や製造法が不明であったり、当時の文明では製造が困難もしくは不可能に見える場合に使われる言葉です。私たちはそれを「時代と場所を越えて素材と技術が出会ったもの」と捉えて、今回『OOPARTS-001』と名付けました。

山口 開梱ナイフの実用性とオブジェのデザイン性が、石器というモチーフで見事に融合していますね!

「仕事がないなら時間がある!」
〜マインドを切り替え、長年の目標「自社製品の開発」を実現〜

山口 今回この製品を開発されたのはコロナ禍がきっかけなんですか?

加藤 以前から将来的に自社製品を作っていきたいという想いはあり、そこに向けて少しずつですが準備をしてはいました。昨年コロナ禍が見えてきたときに、やはり仕事が減るということが真っ先に頭に浮かび、そこで「仕事がないなら時間がある」とマインドを切り替えて、今までなかなか進められていなかった自社製品の活動に力を注ごうと長年の目標へのチャレンジを決めました。
そうした活動をする中で、「Withコロナ、Afterコロナの暮らしを楽しくするもの」というコンセプトで、プロダクトデザイナーとモノづくりの会社を繋いで一般向けの商品を開発する『AICHI DESIGN VISION』という株式会社AMN主催の企画のご案内をいただいたんです。そこで飛びついて色々とプレゼンをさせてもらったところ、デザイナーチーム『AATISMO』と一緒に組んで開発を進めさせていただくことになりました。

山口 ピンチに落ち込むのではなく、前向きな一歩を踏み出すきっかけにされたんですね。これも勇気のいることだと思います。

加藤 AMNさんとしても初めての取り組みで、かなりの数に声掛けしたらしいですが、このタイミングで手を挙げる会社は少なく、当社を入れて数社だったようです。

山口 そこから集中的に開発を進められたんですか?

加藤 そうですね。コミュニケーションツールを使ってデータのやり取りをしたり、ほぼ毎週オンラインのミーティングを重ねてきました。まず「何を創る?」というところから始まり、金属を削ることでどのような価値を提供できるのか、時間をかけて様々な案をチームの中で出し合い、かなりの数の試作の末にようやく辿り着いたのがこの製品ですね。



山口 今回クラウドファンディングのMakuakeで先行販売をされましたが、かなりの反響でしたね。実際、手応えというのはいかがでしたか?

加藤 製品自体に「カッコイイものができた」という自信はありましたが、一方で「パッと見で何か分からないものを作ってしまったぞ」という思いもあり、これがウケるのかどうかは正直全く自信がありませんでした。このために当社でもSNSの公式アカウントを作って事前に広報したりしましたが、「そんなにたくさん出るはずはないから、プレミアム感を出していこう」とシリアルを刻印して限定100個でMakuakeに出したところ、オープンしてすぐにたくさんの応援購入をいただいて1日で終わってしまい本当にびっくりしました。

山口 想像以上の反応だったのですね!

加藤 本当に有難いですね。「かっこいい」とか「玄関に飾りたい」といった応援コメントもいただけていて非常に嬉しく思っています。


若手中心のモノづくりプロジェクト『チーム セイワ魂』
〜「主体性のあるモノづくりにチャレンジしたい!」〜

山口 とはいえ、普段は自動車部品などの切削加工をされているわけで、いざ自社製品を作ろうというときに社内では戸惑いの声もあったのではないですか?

加藤 もちろん我々としても初めての体験ですし、デザイナーさんが入るというので戸惑う部分はありました。ですが、以前から『チーム セイワ魂』という社内の有志を集めたモノづくりプロジェクトチームを結成して細々と活動をしていましたので、今回もその一環として動くことで前向きな視点で捉えてもらえました。

山口 それはどういった経緯で結成されていたのですか?

加藤 私は前職でエクステリアの資材メーカーの営業をやっていたんです。メーカーとして工務店やエクステリア業者などに様々な商品の提案をさせていただく仕事をしていました。そのため、自動車部品の加工という下請けの仕事に対して入社当初は少し抵抗感がありました。試作部品の加工ということで、メーカーの設計さんと直接お話をしたり非常にやりがいはあるのですが、一方で下請けという受け身なスタンスに対して、やはり「主体性のあるモノづくりにチャレンジしたい」という想いがありました。それで代表に就任した2016年に全社員を集めた方針説明会を開催し、私自身の長期的な目標の1つとして、「5年以内に自社製品を作って、販売チャンネルを構築することを目標にします!」と宣言したんです。

山口 おお! 本当に5年じゃないですか!

加藤 そうなんです。宣言の2年後、社内で有志を募ったところ若手の3名が手を挙げてくれて、「セイワ魂」を結成しました。それから細々とですが自主的な活動を行ってきて、奇しくも宣言通りの5年で我々が想いをもってつくり出したモノを世に出すことができたのは非常に感慨深いです。



少しずつでも積み重ねてきた経験が今を導いた
〜まずは「自分たちの作りたいモノをつくる」ことから〜


山口 「セイワ魂」では実際にどういった活動をされてきたんですか?


加藤 「自分たちの作りたいモノをつくる」ということをテーマにして、まずは自分たちで考えたものを自分たちで作るところからスタートしました。若手ばかりで加工経験が豊富ではないメンバーもいたので、それこそ機械操作の練習から始めたりしながら、いくつかの製品を作りました。自分専用だと言って、スマホのスタンドスピーカーを作って披露したメンバーもいます。ただ、自分たちの業務とのバランスを取らなくてはならず、推進力を持って進められなかったのは反省点としてあります。具体的な自社製品の形は全く見えていなかったですね。

山口 ある意味、コロナ禍で時間ができたのは良いタイミングだったとも言えますね。

加藤 そうですね。最初はコロナ対策グッズを作ろうということで、色々な事が前に進みだしました。昨年の夏には初の自社製品を開発し、結果は芳しくなかったもののクラウドファンディングにも挑戦しました。その活動の中で市役所や商工会議所にも相談し、自社製品を出されている製造業の会社さんを紹介していただき、チームメンバーを連れて回ったりもしました。経営者のマインドや社内的な取り組みの方法などを勉強させていただいた中で、金属という素材の美しさを活かすことなどヒントを得ることもできました。

山口 少しずつでも積み重ねてきた経験が、『OOPARTS-001』へと繋がったのですね。

「スタートをゴールと思わない」「一発屋で終らないためにアンテナを張る」

山口 「セイワ魂」のメンバーということで、今回新実拓也さんと樋口直人さんにも取材させていただきたいと思います。まず、「セイワ魂」というプロジェクトチームに参加しようと思ったのは何故ですか?

樋口 もともと自分は前職で子供たちに英語を教えていたのですが、モノづくりが小さいころから好きだったので、モノづくりに関わりたいという思いで当社に転職しました。自社製品を作るチームということで、何だったらそっちばかりやりたいというぐらいの気持ちで参加しました。

新実 僕がモノづくりの業界に入ったのは、職人に憧れていたというのが理由です。「セイワ魂」でやろうとしていることが、自分たちで考えて、自分たちの作りたいものを形にしてみるというコンセプトだったので、最初に憧れていたところに1番近しいものだなと感じて、やってみたいなと思ったからですね。

山口 なるほど、お二人とも自分たちで自社の製品を作るというところに惹かれたのですね。それで実際に活動を始めてみていかがでしたか?

樋口 削るという技術だけで、「何かを創り出す」ということはやってきていなかったので、ずっと試行錯誤でした。「じゃあ何する?」から始まって、「こんなんあるよ」「あんなんあるよ」とやってみてもすぐに凄いものはできてこないので…。今回はプロのデザイナーが付いているので、デザインをずっとやってきた人がいることでこんなにも違うのかというのを実感しました。自分たちでやってみた初のクラウドファンディングが、ドアの丸ノブを握らずに開けることができる『リスプン』というコロナ対策グッズで、今回の取組みはだいぶ差があるなと。

山口 今回『OOPARTS-001』を開発されて、手応えの方はいかがでしたか?

樋口 カッコいいということは分かるんですけど、「1万円の開梱ナイフ」として世の中で価値があるのかというのは自分たちでは分からなかったです。でもデザイナーさんたちはずっと「いや、分かる人には分かるだろう」という姿勢で、実際にそういう人たちに伝わったという結果になってすごい驚きです。メディアにも取り上げてもらって、それぐらい見る人たちが見ても価値があるものになっているんだなと実感しました。

山口 とても良いスタートを切った『OOPARTS-001』ですが、今後の意気込みなどはありますか?

新実 まずは「スタートをゴールと思わないように」と思っています。ここがまさにスタートで、ここからが本当に本番だなと思っているので、常にそこは忘れないように、もっといいものを作りたいです。やっぱりこのプロジェクトのコンセプトが「コロナの中でみんなに楽しんでもらうものを創る」ことなので、そこに向けて今からもっと頑張ろうという気持ちが大事かなと思っています。

樋口 ブランドが続くには、続けられる何かが必要だと思います。この価格帯で商品を出していって売れ続けるための相応のブランド力をどうやって創っていくのか。あれだけ受け入れてもらえたので、一発屋で終らず継続していくためにはどうしたらいいのか、アンテナを張りながら見て行きたいです。

新実 デザインだけじゃなく加工の技術も詰まっている製品で、職人というか技術者として、今までやったことのないものに取り組む大事さが実際に結果として分かりました。今だからこそ新しいことにチャレンジしてみることが大事なんだと思います。

山口 手応えを感じると同時に、これからの課題をちゃんと意識されているんですね!

販売チャンネルの構築と『OOPARTS』のシリーズ化

山口 それでは、最後に今後の展開についてお聞かせください。

加藤 『OOPARTS-001』については、今回この「AICHI DESIGN VISION」という企画に参加した4社合同で、商品発表会をYouTubeLive配信する予定です。また、4月24日(土)には、名古屋のFabCafe Nagoyaで販売イベントも開催します。今後ECサイトもオープンして、一般販売を開始する予定です。その後5月には、東京ビッグサイトで開催される「インテリア ライフスタイル展」にも共同出展をさせていただいて、販売チャンネルを構築していきたいと思っています。


山口 実に盛りだくさんですね!

加藤 また、現在『OOPARTS』を金属製の置物その他として商標登録を申請中です。今後この『OOPARTS』というものをリーズ化していきたいです。今回そのために『OOPARTS-001』というネーミングにしていますので、この「OOPARTS」という世界観を維持した中で、今後「002」「003」と生み出していきたいなと考えています。

山口 非常に楽しみですね! その際には、ぜひまたお話を伺いたいと思います。本日はありがとうございました!


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