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レポート 2020年7月別刊号
全国的に緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開されています。しかし、再開はしても「今まで通り」ではありません。いまだ感染者が出続けている新型コロナウイルスの動向が見通せない中、ウィズコロナにおけるニューノーマル(新常態)の世の中では感染防止策にも手は抜けず、自由に移動や経済活動ができない消費も人出も減少した「7割経済」になると言われています。
そんなコロナ禍において、中小企業が今この危機を生き抜いていくために必要なものは何か。そんな情報を広く発信するべく、スモールサンでは『スモサンWebinar』と題して動画配信企画をスタートしました。専門家をゲストに招き、毎回一つのテーマについて30分の動画を生配信しています。5月1日の第1回から、現在までに7つのテーマで動画が配信されました。
そこで今月の別刊ニュースでは、スモサンWebinar第1回「雇用調整助成金」の概要をレポートします。各動画は生配信後もアーカイブとしてスモールサン・オフィシャルサイトでご視聴いただけますので、まだ観ていないという方はこれを機にぜひ他の回もご視聴ください。
第1回「雇用調整助成金」
ゲスト:曽我社会保険労務士事務所 曽我浩氏フォーリーフクローバー株式会社 榎本教俊氏
スモールサンM&Aプロデューサー 萩原直哉氏
雇用調整助成金は、コロナ禍で休業を余儀なくされた中で、従業員の雇用を維持するために企業が支払った休業手当の一部を助成する制度。支給対象となる事業主の基準は「申請月の前月の売上げが前年同月比で5%以上ダウン」していること。助成対象は雇用保険被保険者です。
曽我 コロナウイルスによって、今、休業を余儀なくされる会社も多いです。労働者には、やむなく休んでもらいますが、解雇はしないでくれと。雇用を維持するために幾らか助成しようということでできたのが、この雇用調整助成金です。
本来助成金というのは計画届の事前提出が原則ですが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置として、1月24日からの休業については実施してからの申請が可能になっています。また、通常は支給限度が一年間で100日のところ、同様に特例措置として緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和2年9月30日)に実施した休業は100日の限度にカウントせずに請求できます。
支給を受けるために必要な休業日数も通常は所定労働延日数の1/20のところ、今回は1/40でOKになりました。例えば従業員30人の会社で所定労働日数が22日間であれば、30名×22日=所定労働延べ日数660日、最低必要休業日数は660日×1/40≒17日となり、全員が休業する場合は一人0.57日、17人が休業する場合は1日ずつ、1人なら17日休業すればクリアできるということになります。
気になる支給額ですが、休業補償として会社が支払った金額に応じて助成金がもらえるわけではありません。まず前年度に雇用保険料の算定基準となった賃金総額から一日1人あたりに支払った平均賃金額を計算します。これに休業手当等の支払率をかけた基準賃金額に対して、助成率として4/5または解雇等を行っていない場合10/10をかけた金額が、15,000円を上限として支給されます。(第1回配信後に上限額と助成率が引き上げられました。※第6回にて解説)
(平均賃金額 × 休業手当等の支払率)×助成率 ※1人1日あたり15,000円が上限
例えば、従業員5人に対する前年の賃金総額が2700万円、総労働日数が259日という会社の場合、2700万÷5人÷259日で平均賃金額20,850円となります。仮に休業手当として給料の85%を支払っていたとすると20,850円×85%で基準額17,723円となり、助成率4/5の場合は14,178円、従業員を解雇等していない場合は助成率10/10で上限15,000円が支給額となります。
そして、雇用調整助成金で曽我氏が特に強調したのは、休業中に教育訓練を3時間以上行うことで支給額が一人2,400円上乗せされること。通常では助成対象とならなかった自宅での動画研修やオンライン研修も対象となり、同じく研修内容についても以前はその業種に関係のある内容でなければいけなかったところ特例措置により教育接遇・マナー講習、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修等も対象となりました。
曽我 やる気のある中小企業は、この機会に徹底的に教育し、コロナ明けにロケットスタートができるようにすればいいわけです。
新型コロナウイルスの影響に伴う特例の拡充により、緊急対応期間内で支給対象となった教育訓練(以下、厚生労働省のリーフレットより引用)
・自宅などで行う学習形態の訓練(片方向受講・双方向受講いずれも可。サテライトオフィスなどでの受講も認められます。)
・職業、職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる訓練(例:接遇・マナー研修、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修)
・繰り返しの教育訓練が必要なものについて、過去に行った教育訓練を同一の労働者に実施する訓練(※同一の対象期間における再訓練は認められません。)
・その企業において通常の教育カリキュラムに位置づけられている訓練(自宅などで実施するなど、通常と異なる形態で実施する場合に限ります。)
・自社職員である指導員による訓練(当該指導員が一般的に教育的立場にあり、一定程度の知識、実務経験を有すること、および自宅などでインターネットなどを用いた双方向での
訓練を実施するなど、通常と異なる形態で実施することが必要です。)
よくあるQ&A
1Q助成対象となる教育訓練とは、どのようなものを指すのですか。
A.助成対象となる教育訓練は、職業に関する知識、技能、技術の習得や向上を目的とするものであることが必要です。
2Q.片方向研修、双方向研修とはどのような研修でしょうか。
A.片方向研修:テレビのように、講師が一方的に情報を発信する研修を指します。
双方向研修:講師と受講生が互いにコミュニケーションが行える研修を指します。
3Q.半日訓練とはどのような訓練でしょうか。
A. 3時間~1日の所定労働時間未満の教育訓練を指します。
4Q.加算額は教育訓練の時間及び日数により変わるのでしょうか。
A.加算額は、助成金の対象となる教育訓練の日数(半日訓練の場合は0.5日)に1,800円(中小企業は2,400円)を乗じた額となります。
5Q.教育訓練の内容を提出する必要はありますか。
A.実施主体※、対象者、科目、カリキュラムおよび期間を確認できる書類が必要です。また、実施後に各受講者の受講を証明する書類(受講者レポートなど)提出していただきます。(※実施主体:事業主、研修講師など)
6Q.半日訓練を2度実施した場合は、1日として数えるのでしょうか。
A.2度半日訓練を実施した結果、1日の所定労働時間に達した場合は1日として数えます。
申請に必要な書類一式は、下記の厚生労働省ホームページからダウンロードできます。
【厚生労働省 雇用調整助成金 申請手続】
申請に必要な書類もこれまでの半分くらいになっているそうです。「面倒くさそう」「難しそう」とは思わずに、まずはトライしてみましょう。
曽我 記載例も右側にあります。Excel用のものを使うと、自動計算をしてくれます。
萩原 これを書くのも大変そうですが、間違えても大丈夫ですか。
曽我 大丈夫です。間違えると、労働局から電話がかかってきます。
萩原 間違っていたら、教えてくれるんですか。
曽我 そうです。確認の電話が来ます。
山口 安心してまずは一回申請にトライしてくださいということですね。
曽我 何のリスクもありませんから、トライしてください。事実に基づかない不正受給でなければ、何も怖くありません。
なお、支給額の計算((平均賃金額 × 休業手当等の支払率)×助成率)における平均賃金額の算定について、「概ね20人以下」の小規模事業所は、実際に支払った休業手当から計算できるよう簡略化されました。これについては、学生アルバイトなど雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当「緊急雇用安定助成金」とあわせて、第4回で解説しています。
曽我 緊急雇用安定助成金の場合は、雇用保険に入っていない人が対象です。ですから、昼間の学生などは、たとえ20時間以上働いたとしても雇用保険には入れませんが、緊急雇用安定助成金の対象になります。特に留学生などは、資格外活動で28時間まで許されているんです。こういう人も対象になりますから、ぜひ緊急雇用安定助成金に結びつけていただきたいと思います。
ただし、先ほどお勧めした教育訓練給付は「雇用調整助成金」のみですのでご注意ください。
『スモサンWebinar』では、この他にも様々なテーマで情報を発信しています。コロナ禍を乗り越えるには、まず情報が大切です。スモールサンではこれからも中小企業が生き残るために必要な様々な情報を配信していきますので、お見逃しなくぜひ活用してください。
スモサンWebinar
・第1回「雇用調整助成金」
・第2回「持続化給付金」
・第3回「新型コロナ対策 これから経営者が取り組むべきこと ~資金対策と管理会計~」
・第4回「緊急雇用安定助成金」
・第5回「コロナ禍における事業計画の見直し ~事業計画と人材の活用はマッチングしているか~」
・第6回「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」
・第7回「従業員のメンタルケアでコロナ離職を防ぐ ~メンタルヘルス対策助成金~」
※なお、これらの内容は配信当時の情報となっています。