スモールサンニュース山口恵里の”現場に行く!”

第39回 株式会社ミナロ


皆さん、こんにちは!スモールサン事務局の山口恵里です。
「山口 恵里の“現場に行く!”」第39回は、12月17日配信のネットラジオ「櫻井浩昭の“人・人・ばなし”」第57回にゲストとしてご出演いただいた株式会社ミナロ代表取締役の緑川賢司氏にお話をお聞きしました!

神奈川県横浜市で木製のモックアップやモデル、木型の製作をされているミナロ。前身となる木型製作所が一般業務を停止したことにより、その時残された従業員で立ち上げた会社です。
緑川さんは日本初というケミカルウッドのオーダーカット販売を始められた他、「全日本製造業コマ大戦」の立ち上げなど中小製造業を盛り上げる活動にも積極的に取り組んでいます。

さて、そんな緑川さんですが、現在新たな隣接異業種へ挑戦されています。
それは何と、女性向けのインテリア雑貨「ハーバリウム」。

一体、木型とハーバリウムがどのように隣接しているのでしょうか?
ラジオを聴いた方もまだの方もぜひご覧ください!


会社名:株式会社ミナロ
代表者名:緑川賢司
所在地:
〒236-0004
神奈川県横浜市金沢区福浦二丁目13番地34
事業内容:
木型、モックアップ、モデル製造
検査治具製造
ケミカルウッド材料販売
インテリアデザイン
WebサイトURL: https://www.minaro.com/
ケミカルウッド壱番店URL: https://www.minaro.com/wood/
横浜ハーバリウム弐番店URL: https://www.hbrm2nd.com/

日本初「ケミカルウッド」のオーダーカット販売
~自社で使う材料だからこその強み~

山口 緑川さんは、「櫻井浩昭の“企業探訪”」2012年9月号に続いて別刊ニュースでは二度目のご登場ということで、前回の内容も振り返りながらお話をお聞きしたいと思います。ミナロはもともと前身の木型製作所が一般業務を停止し、残された従業員の方で立ち上げられた会社なんですよね。この「木型製作」というのは具体的にどういったものなんですか?

緑川 主に人工木材のケミカルウッドやアクリルなどの樹脂で、モックアップ、モデルと呼ばれる木型を製作しています。いわゆる模型をつくるのをイメージしていただければと思います。従来は「木型屋」というと鋳物をつくるための型が多かったんですが、今は当社では模型をつくる方が多くなっていますね。



山口 この素材が一つ大きなキーワードになっていて、ウェブで「ケミカルウッド」と検索するとミナロがトップに出てくるという。

緑川 「ケミカルウッド壱番店」という、当社のネット販売サイトですね。当社は日本で最初にケミカルウッドのオーダーカット販売を始めていて、必要な大きさだけをお届けすることができます。材料メーカーから買うと大きいまま届くので、少ししか使わない人は困っちゃうわけですよね。当社では木型製作をやっていますから、残りの部分は他のお客さまに売ることも当社の木型の材料にすることもできますので、「必要な分だけ」に対応できるんです。現在は自社のオンラインショップの他に、AmazonとYahoo!ショッピングでも販売しています。


山口 なるほど。自社で使う材料だからこそ大量に安く仕入れることができるし、販売するサイズも定型にこだわる必要がないわけですね。どういった方が購入されるんですか?

緑川 もともとは「BtoCをやりたい」という思いから始まっていて、模型やキャラクターアイテム、インテリアグッズ、チョコ型の製作など様々な用途で個人の方に買っていただいていました。ただ最近はちょっと変わってきていまして、企業の購入も多くなっていますね。

山口 企業としてもそういった小さいサイズへの需要というものが、想像していたよりも大きかったんですね。

女性向けBtoC商品「ハーバリウム」
~日本生まれのインテリア雑貨~

山口 さて、そんな中、現在は更に意外な挑戦をされているということで…。それが何と「ハーバリウム」の製造販売という。

緑川 はい。「ハーバリウム」というのは、透明なボトルの中に枯れないよう特殊な加工を施した植物「プリザーブドフラワー」を入れて、専用のオイルで浸したインテリア雑貨です。いうなれば女性向けのBtoC商品ですね。

山口 今ブームになっていますね。実は私も持っています。

緑川 おしゃれなインテリアショップや百貨店でも扱われるくらい世の中に普及し始めていますが、実は日本で生まれてまだ2年くらいしかたっていないんですよ。なので、今後どんどん色々な形に進化すると思います。現在もボトルに入ったものだけでなく、ボールペンに入っているハーバリウムなどもあるんですよ。



山口 販売はどこでされているんですか?

緑川 デパートや百貨店などにも卸している他、「横浜ハーバリウム弐番店」として当社の3階やオンラインショップでも販売しています。始まりは小さな棚一つだったんですが、今では部屋全体がハーバリウムショップになっています。

山口 ミナロがあるのは横浜金沢の産業団地ですよね。購買層の女性が日常的に訪れるような集客の見込める地域ではないと思うのですが、店舗に買いに来られる方っていうのはいるんですか?

緑川 それが結構多いんですよ。インテリアだけに実物を見て買いたいという方が圧倒的に多いですし、ケミカルウッドと同様に材料の販売も行っているので、そちらもやはりちゃんと実際の色やサイズを見て選んで買いたいと。遠方の方はネットで買われますが、関東は勿論、岐阜や新潟から来られる方もいますよ。

山口 凄いですね!



発想の転換による隣接異業種
~日頃からアンテナを~


山口 それにしても木型とハーバリウムって非常にかけ離れた存在だと思うのですが、どういったきっかけで挑戦されたんですか?

緑川 1年半ほど前ですかね、当社に勤めていた女性の事務員さんが「ハーバリウムやりませんか?」と言い出したんです。まだ今のようなブームにもなっていない頃でしたし、私もその時に初めてハーバリウムというものを知りました。

山口 まさか事務員さんの提案だったとは!とはいえあまりに本業とかけ離れすぎていて、普通に考えたら「いやいや無理でしょう」となりそうなものですが…。

緑川 確かに当社は木型屋です。でも、その木型の仕事って毎年減るわけですよ。どんどんどんどん減る。それで、「いずれ業種転換しなきゃいけないだろう」とずっと考えていたんです。山口先生がよく言っている“隣接異業種”ですね。さらに考えていたのは、「BtoC商品」であることと「女性向けをつくりたい」ということ。そんな時にたまたまハーバリウムという提案があって調べてみたら「まさにコレだ!」と。

山口 うーん、全く隣接していない気が…。

緑川 ところが、ちゃんと“隣接”してるんです。ハーバリウムは何で出来ているかというと、「ボトル」と「オイル」と「花」。この花は生花ではなく、加工処理された「プリザーブドフラワー」。つまり、全て工業製品で出来ているんですよ。それがどういうことかと言うと、他の人よりも私たち工場の方が安く仕入れることができるということなんです。そうして自分たちでハーバリウムを製作しながら、同時に製作するための材料も小分けにして販売する。扱うものが変わっただけでやっていることは全く同じなんです。

山口 なるほど、商品やそれを売る相手ではなく、やっていることの流れを見ると確かに同じです!日頃から考え続けていたからこそ、柔軟な発想の転換でチャンスを掴むことができたんですね。



材料を売るだけでなく、製作した作品はショップで販売も!
~ハーバリウムを気兼ねなく楽しめる環境づくり~


山口 「ハーバリウムをつくろう!」と決めた時、社員さんの反応ってどうだったんですか?かなり驚かれたと思うのですが…。

緑川 半信半疑でしたね。最初は様子見の社員が多いですよ。ただ、今はある程度の実績を出していますから、そうすると「そんなに売れていたの?」と納得してくれます。結局みんな会社が儲かってくれればいいわけですからね。普段は木型を製作しながら、売り場にも入ったり「出張」してくれています。

山口 納得させるには、まずは実績を見せるのが一番ということですね。製作は全て自社でやられているんですか?

緑川 初めてしばらくはそうでしたが、最近は外注も使っています。と言いますのも、当社がハーバリウムの材料を販売しているのは個人の女性客が殆どです。彼女たちは趣味でハーバリウムをつくるので、どんどん作品ができちゃうんですよ。最初のうちは友達にあげたりするんですが、それも限界がある。それでも好きだからどんどんできちゃう。そうすると置き場所がなくなるわけです。そこで、当社でその作品を展示して販売しますよということで、現在そういった方々が14人ほどデザイナーとして当社に登録しています。

山口 最近は趣味でもプロ並みの作品をつくる方も多いですもんね。よくできた作品は披露したいし、あわよくば売りたいという気持ちはよく分かります。

緑川 当社はデパートやモールにも出店していますので、そこでも預かった作品を販売します。最近も12月の初めからひと月ほどモールに出していました。デザイナーにもよりますが、数万円売り上げる方も普通にいますよ。

山口 すごい!完成品だけでなく材料も提供し、さらにはつくった作品を販売するところまで、ミナロにくればハーバリウムを気兼ねなく楽しめるわけですね。

町工場でもBtoCを!
~納期と価格をつくり手側でコントロールしたい~

山口 緑川さんは「BtoC」へ強いこだわりを持っておられますよね。

緑川 そうですね。最初にオンラインショップでケミカルウッドのオーダーカット販売を始めたのもBtoCをやりたかったからです。先ほど最近は企業の利用が増えてきたと話しましたが、それでも販売の仕方は変わっていません。そもそも何故BtoCをやりたかったかと言うと、納期や価格をつくり手側でコントロールしたかったからなんですよ。

山口 なるほど、それはハーバリウムも同じですね。

緑川 はい。BtoCでネットやショップでも売れるんですけど、デパートやモールが相手になると今度はBtoBの要素も出てくる。ですが、厳密にBtoCとは違った形であっても、そういう意味では目的は達成されているわけです。
BtoBだと基本的にお客さまが決めた納期と価格。これに対応できなければ仕事が無くなってしまいます。それが非常に辛いんですよ。ですので、「町工場でもBtoCができるんだ」ということを証明したいという気持ちが最初にありました。

山口 最初に木型製作からハーバリウムの製造販売へとお聞きして、そこに繋がりがあるとは思いませんでした。でも、こうしてお話を聞くと確かに両者には共通点があり、さらにその選択には一貫した目的と理由があるのだと分かりました。

緑川 そのためのBtoCなんです。ですので、当社で扱えるものがあれば今後も増やしていきたいという思いでやっています。

情報発信がネットワークを生み、ネットワークが支えになる
~情報は発信するところに集まる~

山口 とは言えですよ、オンラインショップでの販売にはノウハウがあっても、デパートや百貨店などのこれまでと全く違う販路はそう簡単に開拓できないですよね。

緑川 そうですね。幸いハーバリウムは大きなブームが起きたので、そこに乗れたというのは大きいんですけど、何より大きいのは今まで私が出会ってきた人たちが後押ししてくれたことです。以前から私は名刺交換させていただいた方をリストにして、気が向いた時や話題がある時にメールマガジンを送っていました。それでハーバリウムを始めた頃にもメールマガジンを出したところ、デパートの売り場を持っている方やお土産物屋さんをされている方が「うちで出してみませんか」と声を掛けてくれたんです。

山口 以前の記事で緑川さんは「情報は発信するところに集まる」と仰ってました。緑川さんは「全日本製造業コマ大戦」など日本の製造業全体を盛り上げるための活動もされていますが、そういった様々な場での出会いをそのままにせず、自ら情報発信を積極的に行うことでネットワークが生まれるんですね。

緑川 もう一つ、ハーバリウムが成功したのには、インスタグラムの活用も大きいですね。SNSの使った情報発信の仕方というのは非常に重要ですし、大して宣伝費用をかけなくても反応が起きるというのも面白いところです。



山口 インスタグラム拝見しました。あれってもしかして緑川さんがご自身でやられているんですか?

緑川 女性がアップしているように見えるでしょう、詐欺ですよね(笑)。

山口 失礼ながら、てっきりどなたか他の方が担当されているのかと…。

緑川 もう訓練あるのみですよね。でも、それをしっかりやると反応が起きて売上げにつながるというのが面白いところです。インスタグラムも1,500人ぐらいフォロワーが付くとコントロールしやすくなるんですよ。例えば「ハーバリウムのこういうデザインやこういう材料を明日からここで販売します」という記事を書くでしょう?そうすると、それを読んだ人たちが動いて、電話が掛かってきたりするわけです。


山口 先ほど実際にショップに来られる方も多いと仰ってましたね。

緑川 ちゃんと使いこなすと、こんな産業団地の工場の3階にあるハーバリウム屋にまで、女性たちが買いに来てくれるんですよ。普通はあり得ないことですよね。でも逆に言うと、目的がしっかりあって来ているので、来たら必ず買っていってくれるんです。しかも「せっかくここまで来たし…」と余計に買ってくれたりもする。

山口 立地が悪いからこそ、情報を発信して目的を明確にすることができれば必ず買ってくれる。これもまた面白い挑戦ですね!


日本のハーバリウムを世界のブームに
~まだ知られていない今だからこそ海外へ!~


山口 最後に、今後の展開として海外展開にも挑戦中とお聞きしました。

緑川 はい、ハーバリウムは日本生まれなのでまだ日本にしかないんですよ。今この調子でハーバリウムをつくっていくと、日本の中でもトップクラスにはなれると思うんです。でも、せっかくだから海外に持っていきたいじゃないですか。今海外でハーバリウムを売ったら世界一なわけですよ。

山口 それで、アゼルバイジャンへ行かれたんですね。


緑川 アゼルバイジャンは「第二のドバイ」といわれていて非常にホットですよ。日本人だけビザが無料というほど親日の国です。大学でも日本語教育をしていますし、ここでメイド・イン・ジャパンの綺麗なハーバリウムを持っていけば絶対ヒットするはずだと思って商談会に持っていったところ、やはり評判が良いんですよ。今は交渉してくれる営業の女性を雇いまして、現地で置いてもらえるところを開拓中です。

山口 現地の方を雇われたんですね。

緑川 そうです。物価が安いとはいえ普通に雇ってしまうとそれなりのコストが掛かりますので、本業があるけどそれだけでは食べられないので通訳のアルバイトをしているという女性を現地で見つけまして、1日いくらで月に数日間だけハーバリウムの営業をするといった形でお願いしています。同じようにヒューストンでも1人契約して動いてもらっている他、これからはヨーロッパも視野に入れています。間違いなく人気が出ると思いますよ。

山口 まだ知られていない商品だからこそ、これから世界でブームを仕掛けていくんですね!これからも期待しています!本日はありがとうございました!


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