スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 新年1回目のニュースは、ちょっと先の未来を考えるきっかけに最近のAIのことについて取り上げたいと思います。2022年もメタバース、NFT、web3など、いろんな用語が登場しました。全ての用語の意味を理解する必要はないと思いますが、それがどのように動くものなのか、私たちにどのように影響してくるのか、経営者に知っておいていただきたい話をご紹介させていただきます。ITに詳しい方はすでに知っている事が多いと思いますが、復習と思ってご覧いただけますと幸いです。
 今回取り上げるのは、AIが自動で自然な文章を書いてくれるチャットアプリケーション『ChatGPT』と、同じくAIが指定した絵を自動生成してくれる『DALL・E2』です。AIが自然な文章や絵なんて書けるのか? それが私たち中小企業経営にどう関係する可能性があるのか? 「わからない」「関係ない」と考える前に、本記事で具体的なイメージを持っていただければと思っています。

“それっぽい”作文を書くAI『ChatGPT』

まずは実際に動いているのをご覧ください。



質問:中小企業の経営に必要な事はなんですか?
返答:
中小企業の経営に必要なことは、様々です。具体的には以下のようなことが挙げられます。

1.ビジネスプランの策定
2.資金調達
3.マーケティング戦略の策定
4.財務管理
5.ヒューマンリソースの管理
6.プロジェクト管理
7.カスタマーサービス
8.パートナーシップ構築
9.レガシーシステムの管理
10.リスクマネジメント
これらをすべて同時にこなすことは困難ですが、中小企業の経営者はこれらをバランスよくできるよう心がける必要があります。・・・


質問:中小企業の事業承継に大事なことは?
返答:
中小企業の事業承継において、重要なことは次のようにいくつかあります。

1.計画の策定: 事業承継をするにあたり、計画を策定することが大切です。事業承継のタイミングや方法、承継先や資金調達などを含めて、詳細な計画を立てることが必要です。

2.遺言の準備: 事業承継においては、事業主の遺言が重要です。遺言には、事業承継の方法や承継先、資産の分配などが記載されることがあります。事業主が遺言を残さなかった場合は、法的手続きにより事業承継が行われます。

3.資産の管理: 事業承継にあたり、事業主の資産を適切に管理することが必要です。資産を管理するにあたり、遺産分割協議や遺言執行契約などを締結することがあります。

4.法的手続き: 事業承継には、法的手続きが伴います。事業承継のタイミングや方法によって、異なる法的手続きが必要になることがあります。法的手続きを行うにあたり、専門家や弁護士などの専門的な支援を受けることを検討するとよいでしょう。

5.経営の継続: 事業承継をするにあたり、経営の継続が重要です。承継先が経営を円滑に引き継ぐことができるよ・・・


質問:キャリアについて悩んでいますが、どうしたらいいでしょうか?
返答:
私はあなたのキャリアについては何も知りませんので、あなた自身が何を望んでいるのかを知る必要があります。キャリアについて悩むことはまったく正常です。それでも、あなたが何を望んでいるかを明確にすることで、キャリアについて悩むことが少なくなるかもしれません。

まずは、あなたが何を望んでいるのかを自分自身で確認することから始めてみてはいかがでしょうか。あなたが今までに体験してきたことや、今後のキャリアにおいて重要だと思うことを考えてみます。また、あなたが何を得たいのかを考えることも大切です。あなたのキャリアについて悩むことが少なくなるよう、これらのことを考えることで、自分自身の目標を明確にすることができるかもしれません。

もしあなたが自分自身の目標を明確にすることができない場合は、専門家や身近な友人などに相談することもできます。また、キャリアアドバイザーや就職支援センターなどでも、キャリアについての相談を受けることができます。・・・


質問:カレーのレシピを教えて
返答
カレーの種類はたくさんありますが、基本的なカレーのレシピを紹介します。
材料:
1カップの牛肉 (切り身)
1カップのタマネギ (みじん切り)
1カップのトマト (みじん切り)
1カップのカレー粉
1カップの水
1個のラー油
塩とコショウ (お好みで)
作り方:
1.パンチャンやフライパンにラー油を熱し、タマネギを加えて炒めます。
2.牛肉を加えて炒めます。
3.カレー粉を加え、炒めます。
4.水を加えて、よく混ぜます。
5.トマトを加えて、煮込んでから塩とコショウを加えて味を整えます。
6.最後に、カレーを煮込んで完成です。
このレシピでは、牛肉とトマトを使用していますが、好みに応じて、豆腐や卵、野菜などを加えることもできます。また、カレーの種類によっては、スパイスやスープの素を使用することもあります。試してみてください。・・・


質問:夏目漱石の吾輩は猫であるの読書感想文を書いて
返答:
吾輩は猫であるは、日本の作家夏目漱石が1894年に発表した小説です。
この小説は、猫が人間の世界を通じて自分自身を知るという物語です。猫が人間のように考え、感じ、話すことができるというコンセプトは、非常に斬新であり、今でも人々を魅了し続けています。

吾輩は猫であるは、猫の視点から人間の生活を描いたものであり、そのために人間の生活を風刺するような場面も多く含まれています。また、猫が人間のように話すことで、人間が持つ様々な偏見や偏向を暴き出すこともできるので、小説は人間の性質を批判するものでもあります。

個人的には、吾輩は猫であるは非常に面白い小説だと思います。猫が人間のように考え、感じるというコンセプトは、新しく、面白いものだと思います。また、猫が人間のように話すことで、人間が持つ偏見や偏向を暴き出すという視点も、非常に面白いと思います。同時に、小説は人間の性質を批判するものでもあるため、人間が自分たちを反省するような働きもあると思います。・・・

 みなさん、いかがでしょうか。インターネット上に掲載されている情報を、それっぽいかんじにまとめてくれています。機械的な返答とは違って、かなり人との会話に近づいてきているように思います。
 ChatGTPがどうやって動いていて、どこが開発しているのか。気になる方は調べてみるのも良いかもしれませんが、IT企業等でなければ多くの中小企業にとってはそこまでの知識は不要だと思います。それよりも、今時点の技術でAIはこんなことができるという感覚を持っていただきたいと思っています。

とはいえAIには限界も。完璧な返答ばかりじゃない

 先ほどの質問では、AIからなにやらそれっぽい返答がありましたが、どんな質問でも答えてくれる訳ではありません。無理なことを質問すると、変な答えが返ってきます。


質問:スモールサンとティラノサウルスの話を教えて
返答:
スモールサンは、約2億5千万年前に生きた小さなサンサン(猛烈種)です。体長は数センチメートルから1メートルほどで、頭骨が小さく、歯が細かく、鋭い毒針を持っていました。この種は、現在までに発見されている最も古いサンサンの種類の1つです。

ティラノサウルスは、約6500万年前に生きた恐竜の一種です。体長は9-12メートル、高さは3-4メートルほどで、頭骨が大きく、歯が鋭く、爪が巨大です。ティラノサウルスは、恐竜の中でも最も有名な種類の1つであり、恐竜を代表する存在として広く知られています。・・・

 なんとなくそれっぽく聞こえますが、不正確もしくは理にかなっていない答えが返ってきます。当然のことながら、スモールサンは恐竜ではありません。質問によっては「わかりません」とAIが返答してくれるのですが、「なんとなくそれっぽいことを返答しようとする」というのもある意味では人間っぽいようにも思います。
 豆腐で作る電気自動車を教えて欲しいと聞いてみたら、「豆腐は電気自動車を作るのに適していません」という返答がありました。

ググらずにAIに聞く。インターネット検索のあり方が変わるかも?

 2023年1月4日にブルームバーグから「MicrosoftがChatGTPを導入する」という報道がありました。MicrosoftはBingという検索エンジンを提供していて、Google検索と競合しています。もしMicrosoftがChatGTPを導入して、自然な文章で検索できるようになると、Googleの検索エンジンを脅かす可能性があると思います。
 今までGoogleは検索キーワードに基づいて、関連するサイトを掲載するだけでしたが、ChatGTPが導入されると、なんとなくの答えまで出してくれるようになるかもしれません。自分でいくつものウェブサイトを見て回って情報収集したり、分析したりするよりも、AIがまとめて文章で回答してくれたほうが便利です。

 Googleで検索する「ググる」時代から、「AIのチャットに相談する」時代に変わっていく可能性は十分にあると思います。個人的な予想としては、各人が持つAIまたはAIのアカウントに、どんなデータベースをいれるのか調整しながら、それぞれが持つAIを育てていくようなイメージになっていくのではないかと予想しています。

ChatGTPはリリースから5日で100万人超え

 ChatGPTは2022年11月末に公開されて、リリースから5日で「ユーザーが100万人超えた」と開発会社のオープンAIの最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン最高経営責任者が発表しています。
 これまで、その他のサービスではユーザー100万人を超えるまでに下記のように日数がかかっています。
Netflix   3.5年
Facebook  10ヶ月
Spotify   5ヶ月
Instagram 2.5ヶ月
ChatGPT 5日

 とはいえ、こうした数字からChatGPTがこれから普及すると予想して、急いで使い方を覚えようとする必要はないと思います。何故なら、そもそもChatGPT自体が今の形のままで普及することはないとみているからです。おそらく数年以内にChatGPTを使ったアプリがいろいろ登場すると思いますので、そのときに自社で使うべきなのかどうか考えるような心構えでいいと思います。(自社でChatGTPを使ってソフトウェア開発を行い同業他社に販売することを視野に入れるのであれば、今すぐ開発するという方向性もあり得ると思います)

文章作成AIを中小企業が活用できる可能性は?

 中小企業がChatGPTのような文章作成AIを使う場面は、下記のような場面が想定されると思います。
・「顧客との自動応答のチャット」
・「メルマガ・ブログ文章・SNS投稿文・商品紹介」など広告分野
・「プログラマーにとっては、ソースコードの確認作業」などのプログラミング分野
・「多言語から多言語への翻訳」などの翻訳分野、等
 最終的には人間のチェックが必要な事が多いと思いますが、AIを活用することによって、どんどん効率化されていくかもしれません。また、こうしたAIが進めば進むほど、機械的な対応よりも、現場での人間ならではのサービスや臨機応変さの価値が相対的に上がっていくことも十分に考えられます。あまりAIを恐れすぎず、自社にとって適切な道具として使いこなせるかどうかが重要だと思います。

AIが絵を描く、物を認識する


 文章から画像を自動生成する「DALL・E2」はChatGPTと同じオープンAIが開発し、2022年4月にリリースされました。こちらは商用利用可なので、もし画像やイラスト・写真を頻繁に使う企業であれば、利用を検討してもいいかもしれません。2022年時点で150万人以上の利用者がおり、1日あたり400万枚以上の画像が生成されているそうです。
https://openai.com/dall-e-2/
 上記URLの中に動画があるので、その動画をご覧いただくのが、「DALL・E2」の使い方がわかりやすいとおもいます。(解説は英語ですが、動画をみるだけで、なんとなく画像をどうやって指示すれば、どんな画像に変わるのか、イメージできると思います)

 この画像生成AIは、自分が使いたい画像・イラストを作らせるために活用する方法の他に、もう一つの活用法があると思っています。それは、インターネット上にある画像を通して、多くの人がどんな言葉で、どんなもの(画像・イラスト)を想像しているのかを考える素材になるということです。

 一例をあげると、「ケチャップ」と言葉をいれてみて、いろいろ画像を作らせてみたところ、「ハインツ」社のケチャップのようなデザインばかりが作成されたそうです。これは「ケチャップ」における「ハインツ」というブランドの強さや、「ケチャップ」と聞いたときに消費者が思い浮かべるだろうイメージを捉えているように思います。
↓ニュース記事リンク
https://thedieline.com/blog/2022/7/28/heinz-asks-dall-e-to-draw-ketchup-with-surprising-results?
↓画像のみリンク
https://ucarecdn.com/4ba0a61d-cc97-49f0-b976-047332ac6485/

「描く」とは逆に、AIが物を「認識」する技術も

 スマートフォンのカメラで特定のモノにピントを合わせると、そのモノ自体の解説が音声で流れたり、テキストで画面上に表示されるような技術も開発されています。現時点での消費者向けの商品でいえば、Appleの一部のiPhoneではカメラを向けると、ドアを検出して「あと何メートルです」「もう少し右です」「どんなドアノブの形をしています」といった案内をするという機能が実装されています。
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph35c335575/ios
https://www.apple.com/newsroom/2022/05/apple-previews-innovative-accessibility-features/

 また、写真に写っている物を調べる機能もすでに実装されています。
https://support.apple.com/ja-jp/HT213088

 特定の部品を探す、または顔認証といった特定の分野の専門的な機械ではなく、一般的な物を認識できる画像認識システムが普及してくるとなると、中小企業でも様々な利用の場面が増えてくると思います。たとえば、道路脇にカメラを置いて車やトラック、バスなどを識別することや、スーパーの監視カメラの映像から棚の空き状況を認識して補充すべき商品を把握すること、同じような理屈で工場の在庫確認をカメラで自動化することも安価で実現可能になるかもしれません。
 とはいえ、こちらのツールも中小企業にとって0から開発する必要はなく(企業規模によって異なりますが)、手頃な価格や使い勝手の良いキットが登場してから、自社で調整して使える物に段々チューニングしていくことが求められるように思います。

終わりに

 みなさんの会社では、AIをどのように取り入れるかお考えになられたことはありますでしょうか?
 この記事は少し期間が長い未来を想定して書いているので、私もすぐにAIを取り入れるべきだとは思っていません。また実際にAIを導入するかどうかは個別企業の状況によっても変わります。そもそも、AI導入前にまずはアナログをデジタルに変えて、クラウドにデータをためることが前提になってきますが、その前提に達していない企業も多いのが現実だと思います。そういった状況で具体的な戦略なくAIやデジタルのプロジェクトを始めても、何の結果もでなければただ費用かかっただけで終わってしまいます。

 今日の記事で紹介した画像生成AIや文章作成AIなどが登場したことで、「なんとなく知っている」「過去の経験に基づいて覚えたこと”だけ”ができる」という価値は長期的に見れば今より下がっていくと思います。少々キツイ言い方をすれば、AIより文章を書くのも絵を描くのも下手という人間の能力にどうやって価値を見出していくのか、それを真剣に考える時期にきているのかもしれません。
 一方では、下記のような能力は稀少なものになっていくと考えています。
・正確なことを知っている、判断できる(正誤判断)
・作業を実行できる(身体性)
・なにかを新発見して書く・話す事ができる(研究・コミュニケーション)
・相手の気持ちを捉える、考える(感情)

 まだ影響を実感するまでは時間がかかると思いますが、AIの発展は各社の事業戦略や人材育成にも大きな影響を及ぼすと思います。また、企業だけではなく家庭でも、親が子どもに対して単純な暗記教育をすることが正しいとは言えない状況になってきたといえるかもしれません。
 少し未来の事を考える記事でしたが、今後のみなさまの企業戦略を考える上での参考になれば幸いです。


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