スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

 先日ゼミNAGOYAで講演させていただく機会がありました。ゼミの冒頭でスモールサン・ニュース「景気を読む」の読み合わせにも参加し、僭越ながら記事の内容についてコメントなどもさせていただいたのですが、後から「コメント良かったよ」と言っていただけてとても嬉しかったです。
 実際世の中には数多くのニュースが飛び交い、どの情報を拾い、どういう切り口で読むのかによって、見えてくる世界も変わってくるなと思っています。
 そこで今回は、山口先生のニュースを補完するような記事や、IT導入やDX化において知っておいた方が良いニュースなどを、私の視点でのコメントをつけてご紹介したいと思います。

貿易赤字、1~6月過去最大7.9兆円 資源高響く

財務省が21日発表した2022年上期(1~6月)の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7兆9241億円の赤字だった。 資源高が響き、赤字額は比較可能な1979年以降で半期として過去最大となった。中国経済の減速などで円安でも輸出数量が停滞し、輸入の伸びに追いつかない。

半期としての赤字額は過去最大だった2014年1~6月の7兆6281億円を超えた。 輸入額は前年同期比37.9%増の53兆8619億円に膨らんだ。半期で50兆円を超えるのは初めて。
※赤文字は筆者によるもの

 2022年3月号のスモールサンニュース「景気を読む」で、山口教授が「ロシアに対する経済制裁で石油とか天然ガスなどのエネルギー価格がさらに上昇する可能性がある。そうなれば、エネルギー小国である日本の貿易収支の赤字額がさらに膨らむ。」と指摘していました。
 実際、上記の日経新聞の記事の通り、貿易収支は半期としては、過去最大の赤字になりました。このまま円安の状態が続くと、7月以降も貿易赤字の拡大基調が定着する可能性があります。
 日本は長い間、海外から原材料を仕入れて、日本国内で加工して、輸出するという「加工貿易」という形で経済成長してきました。ところが、2022年にはいって円安になってから輸出数量が増えるどころか、減っています。
 輸出数量が伸びなかった背景には、2022年上期には中国でのロックダウンがあり、現時点も半導体不足や、世界的な物流の混乱などの一時的な要因があるとは思います。こうした様々な背景がクリアになっていったときに日本の貿易の自力があきらかになってくると思います。今後の動向が気になります。

日本経済新聞 2022年7月21日
スモールサンニュース「景気を読む」2022年3月号

円安でSE賃金が「日中逆転」、オフショア開発の価格に転嫁へ

中国などでのオフショア開発が円安によるコスト増に直面している。国内回帰を図ろうにも、日本はIT人材不足が深刻で難しい。オフショア頼みが続き、一部で価格転嫁が始まりそうだ。
 2022年3月からの急激な円安が、国内外のIT人材の価格競争力に大きな影響を与えている。システムの設計やコーディング(実装)を担うシステムエンジニア(SE)の賃金が、日本と海外で急速に接近しているからだ。中国の北京や上海を拠点にするSEの賃金は、関係者の話を総合すると、円安が進んだ2022年5~6月の時点で日本の大都市圏を上回る水準に達した。

円安が進む前から、日本とオフショア先の新興国でSE賃金の格差は縮小し続けていた。「日中逆転」のようなオフショア開発の価格競争力の低下は、10年以上も前からいずれ来ると見込まれていた。経済成長でインフレが進むアジア諸国などで、SEの賃金上昇が5%台かそれ以上の高水準で続いているからだ。

中国の地方都市やベトナム、インドなどの新興国も、かつての「日本の2~4割」という賃金水準は望めなくなってきた。マーサージャパンの調査によると、2021年上期の為替レートで上級SEの賃金は大連が437万円と日本の6割に達し、円安後は7割超まで上昇する。ベトナムも上級SEの賃金が円安前の265万円から335万円に上がり、45%の水準まで高まった。モンスターラボHDの鮄川社長も「ベトナムのSEの賃金は、現在の為替だと日本の5~6割に達した」と話す。

 日本でもIT人材の不足が叫ばれていますが、日本のIT人材を海外の企業がオフショアとして雇用する時代が来るかもしれません。そうなると、日本の大企業ですらIT人材の獲得が十分ではないのに、より人材を採用するのが難しくなっていくことが考えられます。

 製造業と異なりITの仕事はインターネットさえあれば、どこでも仕事ができます。日本のIT人材にとっても、日本にいながら海外の企業で働くということも選択肢にはいってくる可能性があります。
 より一層、IT分野の人材獲得競争が激しくなる中で、どのように自社のIT部門を構築し、IT人材を採用していくのか、そもそも、ITを経営からみてどこに位置づけるのか、今後の課題として差し迫りつつあるように思います。

日経クロステック 2022年7月20日

東京都の人口1403万人 7月、前年同月比16カ月ぶり増加

東京都は27日、7月1日時点の推計人口が前月比6352人増の1403万6078人だったと発表した。前月比での増加は4カ月連続。前年同月比でも4034人の増加となり、21年3月以来16カ月ぶりのプラスに転じた。新型コロナウイルスの影響で縮小していた都内への人口流入が再び活発化しているとみられる。

 コロナ禍の影響で、東京から人口流出は続くという見方もありますが、実際のところは人口流入の動きは活発化しつつあります。
 振り返ってみると、2021年に東京都の人口は、26年ぶりに減少しました。この背景には、一部の企業・業界でテレワークなどの働き方が普及したことで、東京に住む必要がなくなり、ある程度の方々が地方へ移住するという選択をとったことがあげられます。筆者の周辺でも、コロナ禍をきっかけに、東京を離れたところに引越したという話は珍しくありません。また、東京の人口が増えない理由として、日本が外国との移動を制限している外国人の大幅な転入も見込みにくいう状態があります。
 こうした人口流出する、もしくは増加しにくいという背景がありつつも、今年に入ってから東京への人口流入は回復しつつあります。もしかすると、第6派以降が沈静化して以降、経済社会の動きが回復していく中で、地方から上京して東京で就職しようという方が増えたのかもしれません。第7派がはじまった7月以降の都内への人口流入がどうないっていくのか注目しています。

日本経済新聞 2022年7月27日


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