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大澤徳の“現場レポート”!2022年1月号
「中小企業DX(デジタルトランスフォーメーション)のすすめ」
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
コロナ禍によって、中小企業にとってもDXへの対応を求められることが増えました。コロナ禍が落ちついても、デジタル化やDXへの取り組み自体は、衰えることなく、むしろ増えていくと予想される方も多いと思います。
これまでの私の記事では、ITに関する用語の解説をテーマにしてきました。そうした中で、記事を書いたことをきっかけに、「スモサンは具体的にどんなツールをいれているの?」と尋ねられることも増えてきました。
「顧客のために、何かDX的な視点で新しいことをしたいが、どこからやっていいかわからない」そんな声も聞こえてきます。
そこで本記事では、スモールサン事務局でどのようなデジタルツールを活用しているのかを皆様に共有させていただきます。まずはどのような業務から始め、どのようにツールを選択し、活用してきたのか。皆様の取り組みの一助になれば幸いです。
スモサンにおけるデジタル導入は、バックオフィス業務から
スモールサン事務局がデジタルを導入したのは、経理や人事など総務部門、いわゆるバックオフィス業務からでした。事務局内の様々な情報を連携させて、経営判断に活かすためには、まずはバックオフィス部門をデジタル化して、スムーズに情報をまとめられる体制の構築を目指しました。
また、バックオフィス部門から導入を進めたのは、営業部門や、生産部門に比べて、導入しやすい低価格で良質なSaaSのソフトが揃っていたという理由もあります。SaaSのソフトを導入することで、「システムの保守体制を社内に持つ必要がない」「場所、機材を選ばずに利用できる」などのメリットもあります。また、バックオフィス部門は、顧客サービスに直接の影響が生じにくい部分でしたので、色々とトライしやすいという理由もあります。
こうしてSaaSソフトを導入するメリットをお伝えしたところで、「現時点で困ってないし、新しいソフトの導入なんて必要ない」と感じてらっしゃる方も多いと思います。また、「情報漏えいやセキュリティに不安がある」「既存システムからの移行にコストがかかる」などの課題に躊躇している方もいらっしゃるかと思います。
そこで次の項で、どのような視点で導入するソフトウェア・ツールを選択しているのかを共有させていただきます。
ソフトウェア・ツールを選ぶ上で大切にしていること
まず1つ目の条件として、自社のためにオリジナル開発をしない、もしくは開発するとしても最低限度にとどめる、ということです。もし自社のために色々とオリジナルな設定や開発を行った場合に、ITの担当者が退職した場合や、外注業者にお願いできなくなってしまった場合に、困ってしまいます。
2つ目の条件は、日本または世界でシェアが高いかどうか、ビジネスモデルが堅牢かどうか、などソフトウェアを提供している企業の将来性や成長性を確認するようにしています。一度ソフトやツールを導入した後で、もし提供している事業者に何かしら不具合が発生して、別な企業のソフトに入れ替えるとなると面倒です。なので、労務管理や経理など特定の分野で、この会社のソフトが今後伸びていくだろう、と考えられるタイミングまで、やみくもにツールを導入するということはしないようにしています。
といっても、将来性があるソフトウェアを見極めるというのはなかなか難しいですよね。
そこでおすすめの方法が「カオスマップ」の検索です。Googleなどの検索サイトで「カオスマップ SaaS 中小企業」と検索いただくと、様々なソフトウェアについて調べる事ができます。
「カオスマップ」というのは、特定のカテゴリごとに、サービスや商品を提供する事業者を分類したもの。業界地図は業界ごとに企業を分類していますが、カオスマップは、業界ではなく、「人事」「会計」などの機能別に商品やサービスを分類している図です。日本国内でも何社か定期的に作っているので、私自身、時々確認するようにしいています。
カオスマップをみると、中堅企業向け、中小企業向け、個人事業主向け等、様々な価格帯の商品が存在しているのをご覧いただけます。ここに載っている企業は「そこそこ将来性あり、だけどまだまだ玉石混交」といった感じで、私は判断材料の一つにしています。
最近、東京都内のタクシーや電車の動画広告で、様々なSaaS商品の宣伝が行われています。動画広告が流れていると、流行っていてシェアが高いというイメージを持つ方もいるかもしれません。確かに、なかには流行っていて、その後大きく育っていくサービスもあります。しかし、実際には広告宣伝が先行しているだけで、その後鳴かず飛ばずというツールも混ざっているので要注意です。
3つ目の条件は、システム自体の安定性や、セキュリティ対策がきちんとされているか。大切なデータを預けるわけですし、使いたいときに動かない!となっては困ってしまいます。
各ツールやソフトの提供事業者が、SLA(サービスレベルアグリーメント)やSLO(サービスレベルオブジェクティブ)という名前で、サービス稼働率やサービス提供時間、データ管理の仕組み、サポート内容などを説明されています。特にSLAやSLOについて記載されていないという場合でも、規約の中に稼働率やデータ保管について説明されていることがあります。
ここでちょっと気をつけていただきたいのが、そもそもSLAやSLOについて説明していない企業の場合です。こうした企業の場合、まだまだサービスを充実できていない可能性もありますし、そもそもIT企業のフリをしているだけで、実態は営業会社や広告代理店という場合もありますので、お気をつけください。
(参考資料)
Chatwork サービス品質保証 (SLA)
サイボウズ サービスレベル目標(SLO)
導入してよかったツールたち①
顧客管理システム(CRM・SFA):Salesforce(セールスフォース)
こうした選択の上で、スモールサン事務局では様々なデジタルツールを活用しています。それらのツールの中で、他の企業でも使えそうなものをいくつか紹介させていただきます。
■Salesforce
元々スモサン事務局では、とある会社にオリジナルで作ってもらったシステムを、会員管理を目的に使っていました。(もし私が入社する前だったら絶対に発注しないようなグチャグチャなシステムでした。)
この古いシステムがくせ者で、消費税改定にともなう価格改訂によりシステム改修が必要で追加の費用が発生する、サーバーのバージョンが変わるので追加で費用が発生する、など度重なる追加費用の請求に悩まされていました。そもそもシステムが一度も正常に機能せず、会員の情報を確認するためには、紙の書類を確認しなければならない、など大変問題があるシステムでした。
数年前にそのシステムを捨てて、現在はSalesforceで会員名簿の管理を行っています。やっと正確な名簿管理を実現できるようになったことと、いくつかの作業を自動化するなど、業務の効率化に役立っています。
もし、これから中小企業で、顧客管理システムを導入するのであれば、Kintone(キントーン)やZoho(ゾーホー)でも構わないと思います。
■Kintone(キントーン)
■Zoho(ゾーホー)
kintoneやzohoに比べると、Salesforceはコストが高いと感じられる企業も多いかと思います。私は、単なる価格での比較ではなく、「自動化した分どれだけ節約できているか」という視点からSalesforceを選んでいます。
ちなみに、Salesforceを導入する際に最も苦労したのが、データを整理する作業でした。全角と半角が混ざっている、住所を都道府県・市町村・番地に分ける、電話番号のハイフンのあるなしを統一するなどの表記揺れを見直すだけでも相当の手間でした。もし顧客管理システムの導入を想定されている方には、ツールの選定もさることながら、データの整理になるべく早くから取り組まれることをおすすめします。
導入してよかったツールたち②
ファイル保管サービス:Dropbox(ドロップボックス)/BOX(ボックス)
■Dropbox
■Box
■OneDrive(ワンドライブ)
スモサン事務局内の日常業務で使用するデータはDropboxで、社外に共有するデータはBoxというように分けています。長期保管して日常的に閲覧・編集することのないデータは、onedriveを使っています。
スモサン事務局内のNASやPCに共有フォルダを作って、ファイル共有していました時期もありましたが、ファイルを同期するときの遅さや、NASの故障などに嫌気がさして、ファイル保管サービスに切り替えました。
故障の心配もないですし、ファイルのバックアップも自動でとられるので、安心して使っています。
導入してよかったツールたち③
コラボレーションツール:GoogleWorkspace(グーグルワークスペース)/Chatwork(チャットワーク)
■GoogleWorkspace
■Chatwork
コラボレーションツールは、タスクやスケジュール、ファイルなどの情報共有を円滑化させ、業務効率を向上させることを目的に導入しています。
スモサン事務局の場合、出張やテレワークなどで、全員が1つの場所にいることがほぼないため、スケジュールを共有する必要があり導入しました。過去には、毎月初めにホワイトボードのカレンダーに予定を書き込むという作業が発生していましたが、今ではスケジュール共有はデジタルに切り替えてしまっています。
コラボレーションツールは、それぞれの企業にあったもので構わないと思います。
GoogleWorkspaceやChatworkではなく、Microsoft Teams(マイクロソフト チームズ)やLINE WORKS(ラインワークス)でも十分だと思います。もしお客様と従業員の間で、LINEで連絡する必要がある場合には、LINE WORKSがいろいろと管理する上では都合がいいかもしれません。
最近では、アルバイトのシフト管理にTimeTree(タイムツリー)を使っているという話も聞きます。筆者の感覚では、20代以下の世代では、FacebookよりもTimeTreeのほうが普及している印象を持っています。
■Microsoft Teams
■LINE WORKS
■TimeTree
これから、オープンイノベーションに取り組む場合や、ウェブやIT系の人材に副業で携わってもらう場合には、Slackがいいと思います。エンジニアやIT企業では、愛用者が多いツールです。
■Slack
スモールサンで導入しているツールを整理してみました
スモールサン事務局では他にも色々なツールを使用していますが、この記事では紹介しきれませんので、導入している各種ツールを下記の図にまとめてみました。これでも全てのツールは書き切れないので、皆様の企業でも導入の可能性がありそうなものを優先して掲載致しました。
皆様の会社でも、今どんなツールを使用しているのか、一度整理してみてもいいかもしれません。整理することで、どの分野の導入が進んでいるのか、またこれからどの分野の導入が必要なのかを見ることができると思います。図のテンプレートをダウンロードしていただけますので、自社のITツールの導入状況をまとめていただき、これからどの分野のツールを導入するのか、計画してみるのもいいと思います。
おわりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
昨年私が書いたITに関する記事をお読みいただいたある方から、「スモサン公式DX本みたいなのを出版して、今どのツールを入れておいた方がいい!というようなのを教えて欲しい」というアイディアをいただきました。スモールサン自体が少人数で様々な業務を担う必要があり、DXなんて格好いい言葉を意識することもなく、目的の為ただ必死に様々なツールを駆使して業務を効率化してきました。わざわざ書籍を出版するのは大げさのように思いますが、この経験を中小企業の皆様にお伝えして、微力ながらでもDX化の助けになればという気持ちで、本記事を執筆いたしました。
もしシステムの導入やITに関してお困りごとがありましたら、お気軽にご連絡いただきたく思います。私のできる範囲で何かしらご返答できることもあるかと思います。
これから激動の2022年がはじまります。引き続き、皆様のお役に立てるよう事務局一同務めて参ります。