<
大澤徳の“現場レポート”!2021年8月号
中小企業経営者のための、今さら聞けない IT用語
〜クラウドコンピューティングってなに?〜
このコーナーでは、ITが苦手な方には今後のために、既に知ってるよという方には確認のため、知っておくべきIT用語を解説させていただきたいと思います。
最近、企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が話題にあがっています。
この機会に、DXやITについて勉強しようと思われている方も多いのではないでしょうか?
ところが、いざITの勉強をしても、
「IT用語はカタカナばかりで、よくわからない」
「調べてみても、またカタカナばかり」
・・・と、専門用語だらけで、出鼻をくじかれるような方もいらっしゃるかもしれません。
何かの分野を勉強するときには、その業界での用語を理解しなければなりません。
固有名詞は仕方ないにしても、IT分野について「カタカナばかりでわかりにくい」と感じるのは致し方ありません。
さらに、なんとかカタカナ用語を乗り越えて(というか耐えながら)、経営とITの関連性について、わかりやすく書かれている本を探し求めてみても、なかなか良い本がありません。中小企業からみると、イマイチ具体性に欠けるというか、「自社では何をどのようにしていったらいいんだろう?」という問いに答えられていないように思います。多くの場合、IT分野について総花的に解説されている本や、5Gや、ブロックチェーンなどの最近の話題の技術について解説されているだけだったり、単なる自社のツールを宣伝するためなのか?と疑問に感じてしまうような本もあります。大変残念なことですが、IT分野はまだまだ玉石混交の世界です。
これまで何回かITやDXに関するニュースを、スモールサンで執筆したところ、
「ITと経営の繋がりについてヒントになった」
「自分のIT分野の考えや方向性について、確かめになった」という声をいただいた一方で、
「このニュースを読んで、なるほどって思えるのは元々ITに詳しい人だけ」
「このニュース読んだだけでは、何をすれば良いかよくわからない」というようなご指摘をいただきました。
私は、IT業界出身でもなければ、ITを専門に勉強してきたわけではありません。IT専門ではなく、中小企業と沢山関わってきたからこその視点で、なるべくわかりやすく、皆様に情報をお届けしたいと思います。
今回は「クラウドコンピューティング」という言葉を中心に説明させていただきます。
動画は、”再生回数”から、”再生時間”を評価する時代へ
「クラウド」の解説させていただく前に、最近気になったニュースをご紹介させていただきます。
>米・英国でTikTokの利用時間がYouTube超え ただし日韓では依然YouTube優位
https://news.yahoo.co.jp/articles/0eaa75207e47adbca74a0d67e3f8f911ccc29fc0
TikTok(ティクトック)とは、中国のByteDance(バイトダンス)社が開発・運営している、短い時間の動画を投稿したり、誰かが投稿した動画を視聴することができるサイトです。日本では10代と20代を中心に、750〜1,000万人が利用しているといわれています。(2021年8月時点)
昨年、アメリカのトランプ前大統領が、TikTokを禁止したというニュースで、もしかすると名前を聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
2021年6月10日 BBC:バイデン氏、トランプ政権の「TikTok禁止」令を撤回
https://www.bbc.com/japanese/57423311
Tiktokには誰かが投稿した動画を参考に、「自分達も真似してみよう!」と似たような動画を作って投稿するという遊びというか雰囲気があります。動画を投稿する際に使う動画編集機能の豊富さが人気のようです。足を長くしたり、小顔にしたり、びっくりするような機能がたくさんついています。
TikTokもYouTubeも、誰かが投稿した動画を視聴することができる、自分も動画を投稿することができるという意味では同じなのですが、その大きな違いはTikTokのほうが圧倒的に動画の時間が短いということです。
TikTokの投稿時間は、つい最近までは 上限60秒でした。今は3分です。
2021/07/02 TikTok newsroom :1分以上の長尺動画の提供開始
https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/introducing-longer-videos
電車の移動時間や、友だちとの待ち合わせのための数分、寝る前の時間など、隙間時間になんとなくスマートフォンを手に取ることがあると思います。そんな数分の空き時間のタイミングでは、TikTokのように短時間の動画を見るのがちょうどいいと感じている方が増えているのかなぁと思っています。
(念のためにお伝えしておきますと、今すぐに多くの中小企業がTikTokで集客が必要ということを言いたいわけではりません。ただ、短い時間の動画で、社内の雰囲気を上手に表現されて、採用活動に繋げている企業もあるなど、TikTokを広報ツールとして使い始めた企業も出始めてきたなぁという印象を持っています。)
膨大な動画データはどこにある?「クラウドコンピューティング」について
日頃私たちは、TikTokやYouTubeなどの様々な情報を、インターネットを通して、視聴・閲覧しています。
画像のように、インターネットを通して、インターネットの向こう側(雲の上)から、様々なデータを手元にあるスマートフォンやパソコンに持ってくるようなイメージです。
普段、みなさんがお使いのパソコンやスマートフォン自体は、実際に手元にあり、目に見えるので、把握しやすいと思います。
しかし、インターネットを通してデータをやり取りする時、インターネット上のどこかの場所といっても、手元に電子端末がないので、イメージしにくいかもしれません。
ここで、世界で最もクラウドのシェアが高いAWS(AmazonWebService)が、クラウドについて何と説明しているのか見てみましょう。
※AWSは、インターネット通販サイトAmazonから提供されているサービスです。
クラウドとは?
https://aws.amazon.com/jp/cloud/
「クラウド」とは、クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、さまざまな IT リソースをオンデマンドで利用することができるサービスの総称です。クラウドサービスでは、必要なときに必要な量のリソースへ簡単にアクセスすることができ、ご利用料金は 実際に使った分のお支払いのみといった従量課金が一般的です。
カタカナが沢山あって、わかりにくいと感じられるかもしれません。
筆者なりにクラウドを簡単に説明すると、
「自分の手元のパソコンやスマートフォンの中ではなく、インターネットの向こう側にあるパソコンや、パソコンに附属しているソフトを利用する形態」と言い換えることができます。
クラウドを利用するイメージについて
例えば、みなさんが宅配ピザを注文するとします。
自分が届けて欲しい場所を指定して注文すると、どこかのピザ屋さんのピザ釜でピザが焼かれて、指定した場所まで宅配されてきます。
いくらピザが好きでも、自分でピザ窯を購入して自宅に置くのはメンテナンスも大変ですし、元が取れるくらい高頻度で自宅のピザ窯を使う事は現実的ではないですよね。
パソコンとクラウドにも、同じようなことがいえます。
今回のたとえ話の場合では、自宅にピザ釜を構えるのは自分のパソコンで情報処理する事で、宅配ピザを利用するのがクラウドを活用する事です。
もう少し細かく説明しますと、元々は自分の手元にあるパソコンでデータを保管したり、数式を処理したりしていたのが、今はクラウド上にある巨大なデータセンターで難しい処理をさせて、私達はインターネットを通して結果のみを利用するという方法があるという事ですね。
ピザ | 情報(データ) |
ピザ屋にあるピザ釜を使う | クラウド上のデータセンターでデータの保管や情報処理する |
ピザ釜を自宅に置く | 自分のパソコンでデータの保管や情報処理する |
クラウドを利用する種類について
一言でクラウドを利用するといっても、大きく3種類のパターンがあります。
先ほどのピザ屋さんのたとえ話でいえば、こんなかんじのイメージです。(ピザの話ばかりで恐縮です)
1 ピザ釜だけ借りる場合
キッチンやピザ釜などの設備のみを他の人と共有する形態で、自分でピザを焼いたり(もしくは焼いてくる人を探してきたり)、レシピを考える必要があります。あくまでピザ釜は借りているだけですので、自分でピザ釜のメンテナンスや交換をする必要がありません。
2 ピザ釜と職人を借りる場合
レシピを自分で考えて細かく手順などを伝える必要があります。
3 宅配ピザを利用する場合
注文すれば、ピザが届く状態です。ピザ屋さんのメニューの中で、トッピングなど若干自分の好みに合わせて注文することも可能です。場合によっては、ピザ以外にドリンクやサラダなどのサイドメニューも注文することが可能かもしれません。
すぐにピザを食べたいときは3がいいですし、自分(もしくは自社)にピザ釜を扱う技術があったり、レシピに詳しくて、時間があれば、1の選択もいいと思います。
この表のように、「どこまでを自分で担当するのか」「どこまでを相手に用意してもらうのか」によって、クラウドの利用方法が分けられるといってもいいかもしれません。
(参考までに)
IT分野では、1をIaaS(イァース)を、2をPaaS(パース)、3をSaas(サース)といった言葉で表現することがあるようです。
IaaS | Infrastructure as a Service(インフラストラクチャー アズ ア サービス)の略です。クラウド上のパソコンやサーバを借りることができます。 |
PaaS | Platform as a Service(プラットフォーム アズ ア サービス)の略です。借りているクラウド上のパソコンやサーバーのセッティングが終わっている状態で、すぐに開発にとりかかることが可能です。 |
SaaS | Software as a Service(ソフトウェア アズ ア サービス)の略です。利用者が、自分でソフトをインストールしたりする必要がなく、導入までに時間がかからないので、メリットが大きいです。ただ設計の自由度がIaaSやPaaSに比べて低いです。 |
時代はクラウドファーストへ
これまでの30年間で、パソコン、インターネット、ノートパソコン、スマートフォンが普及したり、様々な電子端末が普及してきました。これからの時代は、クラウド上のコンピュータをどのように活用していくかを検討することが大切な時代になってくると思われます。
電子端末は手元に物理的に存在するので、これまでは何か新しい電子端末が登場する度に、時代の変化を目視で確認できたと思います。しかし、現在では時代の変化がクラウドの向こう側で起こっており、自ら積極的に情報収集しなければ、クラウドの向こう側にどのような便利な道具があるのか、把握することすらも難しい時代になりました。
現在は、皆さん自分のパソコンの中で、ワードやエクセルなどを操作されていると思います。これからどう変化していくかまだ確定的ではありませんが、いずれは自分のパソコンの中ではなく、クラウド上で操作するようになることも十分にあり得ると思っています。
ただ、筆者自身、何が何でもクラウドにすればいいと思っているわけではありません。また、玉石混交の様々なサービスの中から適切なものを選ぶのは、とても難しいことだと思っています。
何かのクラウドを導入される際には、クラウドとは何なのかを正しく理解し、自社にとって必要なサービスを見極めるために、慎重に検討することが重要です。
最後に、政府のクラウドサービスについての見解を引用させていただきます。
「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」
内閣府 情報通信技術(IT)総合戦略室 2018年6月7日
コラム:正しいクラウドサービスのみを選択
クラウドサービスの黎明期や成長期には、「クラウド」と名乗ることがビジネス戦略上の必要性となり、クラウドサービスの利用メリットを十分に享受できない、クラウドサービスも数多く出現した。従来型の共同データセンタの単なる延長線上にあるものや、単に仮想化技術を採用しただけのものは、本方針におけるクラウドサービスの定義には該当しない。
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/cloud_%20policy.pdf
終わりに
今回のIT用語の説明について、いかがでしたでしょうか?
もし、「○○ってどういうこと?」「○○は何ができるの?」など、取り上げて欲しい単語やITに関する分野がございましたら、お気軽にご連絡いただきたく思います。
これまでニュースを執筆したことをきっかけに、「自社のITやDXについて、どんなことをやってみたらいいか?」という大きな視点でのお悩みや、「ウェブサイトをどうしたらいいのか」、「業務管理ツールを使って何をするのがいいのか」といった具体的な業務レベルでのお悩みなど、様々なご相談をいただきました。
こうしたご相談に対して、自分がどのようにお役に立てるだろうか、と思い巡らせています。
筆者自身は30代で世代的に若いということもあってか、ITに抵抗感はありません。むしろIT技術は業務の効率化や、新しい価値を生み出すためには必須であると思っています。これまでスモールサンで様々な経営者にお会いしてきて、中小企業には中小企業の強みがあり、デジタル技術を活用する事でその強みを強化したり、さらに新しい強みを生み出していくことができると信じています。
ですが、その一方でIT分野はまだまだ玉石混交であり、説明のわかりにくさや、「中小企業が具体的にどう活用できるのか」といった指針に欠けているのも現実です。
そうした中で、中小企業にとって本当に必要な正しいIT情報をわかりやすく提供し、中小企業経営者とITの間にある隔たりを無くしていくことが、スモールサンの役割の一つでもあると感じています。