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大澤徳の“現場レポート”!2020年2月号
第10回 株式会社ブギ
“つなぐ力”で、市場の変化を乗り越える
〜古本業界の仕組みで、NPOや企業向けCSR活動に貢献する〜
東京都文京区にて、古本の買い取りを行い、大手通販サイトにて再流通させる事業を営む株式会社ブギ。従来は古本の仕入れを、広告による反響に頼ってきましたが、2010年代に入ってから、他企業との競争が激化し、広告の反応率が低下。それに伴って広告宣伝費が増大し、古本の買取コストが上昇、業績が低迷したそうです。
そもそも仕入れできないのは企業にとって死活問題。この問題をきっかけに、今では、「古本チャリティ募金」を積極的に展開し、今では70以上の民間非営利団体(以下、NPO)と連携するようになりました。創業時より、NPOの会員などから、お金の寄付ではなく、物品の寄付として書籍をお引き取りするという方法で、NPOの資金獲得に協力してきた経験を活かされたそうです。最近では、企業向けCSR活動のご支援もされています。
本インタビューで、代表の菅原社長に 具体的な取り組みについて伺います。
【会社概要】
会社名 株式会社ブギ
代表取締役 菅原大司
所在地 〒112-0014
東京都文京区関口1-47-12 江戸川橋ビル2F
創業 2005年10月
古物商許可 東京都公安委員会第305511207619号
Web https://hondana.biz/
Facebook https://www.facebook.com/hondana.otasuke.tai/
Web https://hondana.biz/charity/charityhtml
Web https://osagariehon.com/?p=1029
Facebook https://www.facebook.com/osagariehon/
古本のリユース事業 「学術書」「専門書」「ビジネス書」に注力
大澤 それでは、御社の事業内容について教えていただけますか?
菅原 全体としては古本を中心としたリユース品の売買が事業です。メインブランドは「本棚お助け隊」の屋号で運営する事業で、中古の本を仕入れて、販売はAmazonやヤフオク!などの通信販売と、リアルでの出張販売もやっています。
大澤 実は先日も山口教授の本をお引き取りいただいたんですよね。その節はありがとうございました。
菅原 こちらこそ先日はありがとうございました。
大澤 しかし、一言で「本」といっても、さまざまなジャンルがあると思いますが、御社ではどんなジャンルに注力されているのですか?
菅原 「学術書」や「専門書」、そして「ビジネス書」です。その2ジャンルが他の分野の本に比べて販売時の商品単価が高く、その為に買取価格を高くすることができ、買取顧客へ貢献できる、というのが理由です。良い商品の仕入をさせて頂ける買取顧客からのご支持獲得を意識しています。一方で、廉価品のマンガや文庫本などで、新品が500円程度、Amazonの中古品が300円程度とすると、お客様は「中古の値段に100円多く足せば新品を買えるなら、新品を買おう」となったりします。そのような状況の為、買取価格への反映は限られます。そういった本が中心のお客様には弊社ご利用でのメリットはあまりご提供できていないと思います。
大澤 なるほど、商品単価の高さが顧客と御社とで相互にメリットがあるために、学術書、専門書、ビジネス書に集中されているというのは理解できました。とはいっても、単価が高いということは、その分他社との競争が激しそうですが・・・。
菅原 当然、競争はあります。ただ、本は流行廃りによって中古の値段が変わってきますので、定番や流行のビジネス書を仕入れて販売することで、まだ価格が高い状態で販売する事を意識しています。よくビジネス書を読まれるお客様ですと、古いビジネス書には値段がつかないことをご自身で理解されているので、新しい本を綺麗に読んで、早くに弊社へお送りいただくというリピーターのお客様も結構いらっしゃいます。
大澤 そうですよね。時間が経ってしまうと既に中古品がたくさん流通してたり、そもそもそのビジネス書に書いてある内容が陳腐化することもありますよね。
菅原 リピーターの方ほど、流行の本を早めに読んで、まだ流行っていて中古品の流通が少ないうちに本を預けていただけるので、とても貴重な存在です。ですので、定期的にリピーター向けの買取金額を増やすキャンペーンをやっていますし、何より一度お付き合いさせていただいたお客様を逃さないために、買取価格をなるべく高値で返せるように努力しています。インターネットを通じたお取引は、リアルには顔を合わせないやりとりになります。顔を合わせないとなると、「こちらの買取金額でいかがでしょうか?」というところにサービスの焦点が集中するので、ご納得いただけるように努力しています。
大澤 勉強になります。
「広告」による仕入れモデルが破たん
大澤 そもそも、なぜNPOとの連携を積極的にされるようになったのでしょうか?何かきっかけはありましたか?
菅原 6年ほど前に大赤字を出してしまい、経営危機を迎えたことがきっかけです。我々の商売だと、仕入れの成否が大きな経営要素です。販売についてはAmazon頼みで、とにかく仕入れを頑張るということになります。その当時は「本を仕入れるために広告を出して、その反響で仕入れが増える」という流れだったのですが、仕入れを増やすために広告費用をかけすぎてしまいました。古本の買取業者が増えたことで、広告の効果が薄まり、1冊を仕入れるための広告の単価が、どんどん悪くなっていったんです。
大澤 競合が増えたことで、広告を出しても仕入れが難しくなってしまったんですね。
菅原 はい。当時、売上は上がっていましたし、とりあえずお金が回っているから、何とかなるだろうと思っていたんです。ですが、気づいてみたら、広告宣伝費に全てつぎ込まれていたので、利益は全然残っていませんでした。いざ広告を止めてみると、全然お金が残ってないという苦しい状況になったんです。今、思えば慢心していたなと反省しています。
大澤 それは大変な状況でしたね。
菅原 会社の存続を優先するために、経費をかける余裕もありませんでしたので、ほぼ全ての広告を止めざるを得ませんでした。そうして3、4年も経つと、当然ですが仕入れや買い取りの申し込みがどんどん少なくなっていきました。今振り返ってみれば、よく会社が潰れずに済んだなと思います。そんな状況で、何かしら新しい手を打つ必要があると感じておりました。しかし、今からインターネット広告を出そうにも、数年休んでしまうともうノウハウがないに等しい状況です。更に競合も増えていたので、その中で競争するのも厳しいと感じていました。
大澤 インターネット広告の変化は早いですよね。
「NPOとの連携」へのシフト
大澤 それでは、その経営危機をきっかけにNPOとの連携を模索されたのですか?
菅原 いえ、実は創業の頃から、幾つかのNPOと連携はしていたんですよ。
大澤 元々お付き合いがあったんですね。
菅原 そうなんです。とは言っても、たまたまお声かけいただいたNPOと連携するだけで、特に弊社から積極的に声かけはしていませんでした。一方で、NPOからの問い合わせが増えるなど、連携のニーズが高まってきているのも感じていました。そこで、3年ほど前、広告モデルでの仕入れが厳しくなり、新しい仕入れルートの開拓に迫られたのをきっかけに、NPOと連携して慈善活動を支援するという現在の仕組みを整えたんです。
大澤 元々あったNPOとの連携の仕組みを整備し、他のNPOにも拡げられたんですね。具体的な連携の仕組みについて教えていただけますでしょうか?
菅原 まずNPOで支援者の方などへ呼びかけ、寄付本を集めたり、弊社へ直接送って貰ったりします。そうして各NPOに寄贈された書籍を弊社が買取して、団体さまへ送金するという仕組みです。弊社の買取機能を、NPOにご活用いただいているともいえますね。NPOにとってみれば、寄付金に加えて、もしくは寄付金の代わりに本を集めることができます。また、弊社ではこれらの仕組みの事務局機能も提供しています。
大澤 御社で事務局機能を担っていただけるなら、少人数のNPOでも手間を増やすことなく活用できますね。
NPOとの協業で意識していること
大澤 他にNPOとの協業の中で、意識している事があれば、教えてください。
菅原 ただ買い取りをする、機能を提供するというだけではなく、NPOが本を集めやすくなるためのノウハウを提供できるように意識しています。一言でNPOと言っても様々で、小規模なところでは事務局を一人で全て担っているようなNPOもざらにあります。正直まだまだ道半ばですが、弊社からNPOへ「こういった取り組みで、このような結果がでました」といったノウハウを提供することで、できることから取り組んでいただけるような提案を心がけています。
大澤 それは、ありがたいですね。いってみれば、NPOの資金調達のサクセスサポートですね。
菅原 具体的には、本を募集するチラシを弊社で作成して提供し、NPOで何か郵送される時に同封していただいたり。また、NPOの担当者の方へはメールで定期的に色々な情報を発信しています。例えば、年末や年度末になると、「大掃除で書籍の処分を検討される方が多い時期ですので、ご支援者の方に書籍の寄付を募りましょう」というような情報を発信したりしています。具体的に「こういうツールで、こういうことをやってください」というのをパッケージにして、わかりやすくお伝えするように心がけています。
大澤 日々の活動方法について情報発信されてらっしゃるんですね。NPOとの連携をされている会社は御社以外にもあるんでしょうか?
菅原 一定規模以上の買取業者ですと、買い取りの際にNPOなどへの寄付も選べるようですが、このようにNPOとの連携を積極的に開拓しているのは、弊社を含めても数社だと思います。
大澤 他の買取業者の場合は、あくまでも個人が本を売るにあたっての選択肢の一つなんですね。NPO経由で寄付することを目的に本を送る御社の仕組みとは大きく意味合いが違いますね。
企業向けCSR活動の支援
大澤 それでは最後に、今後の目標や展開について教えてください。
菅原 これからもNPOとの連携を拡げていくとともに、企業や組織のCSR活動向けにも積極的に展開を始めています。企業で社員の方から本を集めていただき、弊社で買い取らせていただいてNPOや団体に寄付をする、という仕組みです。現在(2020年1月時点)、弊社では70以上のNPOの連携先がありますので、たとえば子どもを支援しているNPO、犬や猫などの動物を支援するNPOなど、各企業の事業とマッチングの良い選択肢が多くあります。書籍を集めてお送りいただくことが、企業にとってはCSR活動の取り組みの一環になります。CSR活動のあり方が企業価値として大切な要素になってきており、そのソリューションをご提供しています。本を集める活動は気軽に取り組みやすい活動ですのでご好評頂いております。
大澤 NPOから本をお預かりして、NPOに寄付していたところから、今度は企業から本を募って、NPOに寄付するという仕組みも加わるんですね。
菅原 そうです。企業で書籍を募集しやすいようにと、「ブックポスト」を作りました。各企業にこちらのボックスを置いていただき、段ボールがいっぱいになったら弊社に着払いでご郵送いただきます。弊社に届き次第、書籍を買い取り、あらかじめ指定されたNPOや団体などへ寄付を実行します。
大澤 企業にとっては、手軽にCSR活動を始めることができるんですね。
菅原 通常の買取サービスでは、「専門書」中心にサービス設計をしていますが、多様なお客様を開拓しご利用頂く事もやはり必要です。一方、「古本チャリティ募金」や企業CSR活動の場合は、弊社、NPO、NPOの支援者、とそれぞれ共に『社会や団体へ貢献する』という共通目的がありますし、共にこの仕組みを育ててゆく仲間でもあります。その為、例えば「この本だったらまだ価値があるんじゃないか」とか、配送コストの問題共有など、より積極的に情報共有をして頂ける事が多いです。それは結果として寄付金額にも反映できますし、本の再流通事業として、良い本を再びご利用者に届けることでもより貢献できます。
大澤 たしかにビジネス書や専門書の価値って、読んでる本人がよくわかりますよね。それに、CSRやNPOに関心がある方というのは、色々な問題意識をお持ちの方が多いと思いますので、必然的に読書量も多いイメージがあります。
菅原 せっかくのスモールサンニュースなので、ぜひスモールサン会員企業の皆様の会社で「古本チャリティ募金」にご興味ある方は、ご連絡いただきたく思います。
大澤 そうですね。これからは「企業が社会に対してどういった貢献をしているか」という視点も、企業活動において重要なポイントになっていきますが、とはいえ「何をしたらいいのか分からない」という人も多いのではないかと思います。そうした時にこういったCSR活動を手軽に始められる仕組みがあるととてもありがたいですね。本日はありがとうございました!