スモールサンニュース大澤徳の“現場レポート”

障がい者雇用の現場に見るその“必然性”と“必要性”

取材:スモールサン事務局長 大澤徳

北海道札幌市で、アパートやマンションの賃貸入居者向けに24時間体制のサポートサービスを提供している株式会社リペアサービス。本州の大手資本会社とは異なり、入居者向けサービスであると共に、管理会社のアウトソーシングであり、現在札幌市内で3万7,000世帯まで拡大しています。
今回、代表取締役の富田 訓司氏にお話を伺った目的は、同社が取り組んでいる障がい者雇用の現場レポートです。
「障がい者雇用」というとボランティアや福祉といったイメージが強く、「うちは関係ない」と思う経営者さんも多いのではないかと思います。
しかし、今回私が見た“障がい者雇用の現場”では、雇用された人たちは明確な“戦力”であり、企業側もその対価として報酬を渡すという、ごく当たり前のフェアで対等な関係でした。
今後も中小企業の人材確保が厳しくなっていくのは明白な現在、障がい者雇用の現場で見たその“必然性”と“必要性”を皆さまに共有させていただきたいと思います。


社名:株式会社リペアサービス
所在地:北海道札幌市北区
代表取締役:富田 訓司
設立年月日:平成21年12月 3日(2009年)
主要営業品目:賃貸物件向け24時間修繕受付及び修繕業務
関連会社:
株式会社ALS(アドバンスド・ロジスティック・システムズ)
株式会社ALSスクール(ALS SCHOOL)
株式会社ALSコントラクト(ALS CONTRACT)
サイトURL:http://www.als-ok.jp/

創業の経緯~管理会社の負担とニーズ~

大澤 まずはご創業の経緯をお伺いしたいと思います。

富田 元々はアパートやマンションの内装業で起業しまして、ある賃貸管理会社に懇意にしていただいて業者として入っていました。

大澤 素人ながらの質問で恐縮なんですけれども、管理会社というのはどういうお仕事なんでしょうか?

富田 本来の目的は、オーナーさんの資産を最大限にして次の資産をつくることですよね。依頼を受けてそれを回すので手数料をくださいというのが、僕が思っている管理業務です。でも、オーナーさんの要望でいうと、「毎月いくら払うから不具合や入居者のクレームに対応してほしい」「退去時には部屋をチェックして、綺麗に直してほしい」「それが終わったら、入居促進もやってほしい」と、そんな感じですね。とにかくやる事が多いので、私のところにも内装の仕事だけでなく、修繕やパッキンの交換といったその他色々な不具合の依頼が来ていました。ただ、私も当時は技術も背景も何もない状態ですから、「その管理会社から来るニーズを全部拾って囲い込まなきゃ」という考えで、すべてに対応させていただいていました。

大澤 学生時代に不動産関係でアルバイトをしていたことがあるんですが、確かに管理部門って本当によく電話が鳴りますよね。それこそ「電球を交換してくれ」みたいな電話もあって、「え、それ自分でやらないで電話するんだ」と思った記憶があります。

富田 本来、不具合の連絡があれば管理会社が現地に行って確認し、担当者が自分でできることなら対処します。でも担当者のできることなんて限られてますので、多くは本職に頼むことになる。そうすると、例えば水回りや外壁など何の本職に頼むべきなのか、更にどの業者に頼むのが良いのか、誰なら日程が合うのかと一つひとつ進めなければいけない。それは受け持つ世帯が多くなればなるほど膨大になります。
でも、その一方で空き部屋もあるわけです。本来ならそれを埋めることが優先事項で、その方が収益を向上できるのに、そこに時間を割くことができない。そういった管理会社の状況と、起業して「とにかく全部のニーズを拾おう」と思っている私が上手くはまったんだと思います。特に当時は「専門外のものは受けません」という内装屋さんがとても多かったので、その管理会社さんには本業とは関係ないような様々な仕事も一緒にやらせていただきました。

大澤 取引先はその一社だけだったんですか?

富田 いえ、そうして一緒に仕事をしていく中で強い信頼関係も生まれて、取引先もどんどん増えていきました。管理会社の人たちって会社を辞めても、同じ業種の別の会社に移ることが多いので。
ところが、取引先が増えていくと本業の内装以外の仕事も増えていきます。すると一人では回らなくなる。でも修繕の仕事なんかはサービス的なもので始まっていますから、ある時を境に本業以外の仕事が本業を圧迫するようになってしまいました。そこで、本業以外の部分を別会社に切り離して、新しいビジネスとして始めたのが10年前です。

管理会社のアウトソーシング~365日24時間体制でサポート~

大澤 そこからは、どのように展開されたんですか?

富田 当時札幌にもそういうサービスは既にありましたが、殆どが東京資本なので北海道の実情に合っていませんでした。例えば、本州とは違って札幌の賃貸契約は自動更新なんです。ところが本州のシステムに合わせて、サービスも2年間でいくらという売り方をしてしまい、結果継続してもらえないというケースが圧倒的に多かった。そこで当社ではサービスも自動更新にして月額いくらという形に分解し、入居者に加入していただく形式にしました。そして、管理会社と契約して家賃と一緒に回収してもらい、一定額をまとめて払ってもらうと。

大澤 ある意味、保険みたいな感じですか?


富田 サービスの紹介をする時には、「保険のような考え方です」というお話はしていますね。管理会社にとって何が負担になっているかを考え、入居者から連絡を受けたら無償で現場を見に行きます。また、オーナーさんとの管理委託契約に「管理会社の判断でいくらまでだったら工事しますよ」という1項目がある様に、私たちもその基準をいただいて自分たちで判断して対応できるようにしています。そうすることで、緊急案件で夜間や休日に担当者へ連絡するのを極力避けることができますし、戻って相談するために往復の費用が掛かってしまうといったことも避けられます。

大澤 自動的にやってくれて、トータルのコストも下がるわけですね。

富田 また、もう一つ使い勝手の良い点でいうと、管理会社向けに写真付きの作業完了報告書を毎回必ず提出します。そうすることで、何が起きてどういう状態だったのか、どんな対応をしてどう変わったのかというのが手に取るように分かり、担当者さんは自分が現場に行ったようにオーナーさんに報告できるんです。作業完了報告書が完成すると管理会社にアラート通知が行きますので、送られたURLをクリックするだけで報告書を見ることができます。そのまま印刷するのは勿論、保存はできませんが文章を修正することもできますので、オーナーさんに報告しやすいように手を加えることもできます。

大澤 入居者にとっても管理会社にとっても非常に有り難いサービスですね。

障がい者雇用の“現場”

大澤 ここからは雇用についてお聞きしたいと思います。御社では障がい者を雇用されていますが、どういった業務をされているのでしょうか?


富田 入居者さんからのご連絡は24時間365日受けていますので、そこは完全に外部のコールセンターにお願いしています。ただ、レギュラーな案件に関しては「こういう入電があったらこの業者を手配する」といったフローで完結するのですが、やはりイレギュラーな案件だとそうはいかない。上階から水が漏れてくるなど他の部屋が絡む場合は特にですね。そういった案件のために、コールセンターからの相談に対応する部署があるんですが、そこで一人車椅子の子が働いています。その子は上半身には全く問題ないので、電話対応もパソコン入力も普通にできるんですよ。

大澤 雇ってらっしゃるのは、その方だけですか?

富田 いえいえ、他にも色々な方に働いてもらっています。例えば管理部門なら先ほど話した写真付きの作業完了報告書の作成なんかもそうです。業者から上がってきた報告書の文章をチェックして直したり、業者にヒアリングして専門知識のないオーナーさんでも分かりやすいように修正したり。他にも、修繕で使う材料を当社で取ることがあるのですが、そういったやり取りは今でもファックスのところが多いので、鬱や統合失調症で電話対応が難しいという人にも問題なく働いてもらえます。在庫管理などもやってもらっていますね。

大澤 こうしてお聞きしていると、お願いできる仕事ってたくさんありますね。

富田 これらの仕事は9時間とか8時間労働するほどの仕事量はないので、彼らにとっても体力的にちょうど良いんです。もちろん健常者なら4時間のところ、障がい者の子だと5時間かかったりということはあります。でも彼らは時間給なので、フル勤務の正社員を雇うコストを考えた時に、彼らがそこで1時間多くかかろうが大きな負担にはならないですよ。

大澤 今は正社員を雇おうと思ったら募集するにもコストが掛かりますし、それと比べても経営にそこまでインパクトがあるとは思えないですね。


テレワークで柔軟な雇用


大澤 他にはどういった方が働いていらっしゃるんですか?

富田 典型的な例ですと、筋ジストロフィーの子がテレワークで働いています。その子は、「養護学校を卒業するので、経験として面接だけしてやってほしい」と知り合いに紹介されたんです。それで面接だけでいいならということで話していたのですが、送ってくれた身上書を見てみたら文章がとてもしっかりしているんです。ちょうどその頃、社員に交代でFacebookの更新をさせていたのですが、思った以上に負担が大きく、結局更新してくれないかったり、更新したと思ったら毎日昼飯の話という状態になっていて…。「あ、じゃあその仕事をやってもらおうか」ということで、彼には今週5でFacebookの更新を担当してもらっています。


大澤 なるほど。そのFacebookに上げる内容というのは、どういう風にしているんですか?

富田 担当課長が彼と打ち合わせをして、例えば月曜日には「今日は何の日?」みたいに〇〇デーを、火曜日は「こんな案件をやりましたよ」というのを上げて、水曜日は会社の内部のこと、といった感じで決めています。基本的に上げる中身の部分は殆どお任せですね。

大澤 時間管理などはどうされているんですか?

富田 そこはある程度の緩さを持ちながらやっています。短いことはあっても残業するということはほぼないですし、先ほどの話と同じで、4時間のところ今日は3時間しか働けなかったとなっても大きな影響はないですから。それにどこかで経営者としてずるい計算もあって、その分ちゃんと助成金をもらえていますので、その1時間を余分に払っても「4時間働くことを目標に頑張ろう」と言った方が本人の励みになります。そうしてきっちり週5で更新してもらいながら、時折私たちが「〇〇へ行きました」とか上げる方が、片手間でやるよりもちゃんと良いものになりますからね。

大澤 きれいに役割分担ができているんですね。

富田 他にも、以前の職場が過重労働で鬱になってしまったという子もいます。彼女には入居者のマスター登録関係をやってもらっているのですが、調子が良い時には会社に出てきてもらって、調子が悪い時にはテレワークという感じで働いていますよ。

「特別なケアをする」のではなく「ケアの種類が違う」だけ

大澤 皆さん助成金はもらっているんですか?

富田 時期によりますね。助成金は「もらえればラッキー」くらいのものなので。だから、彼らにも「戦力としてしか雇用するつもりはないよ」と必ず伝えています。

大澤 そこはフェアにお伝えしているんですね。言い方はあれですけれども、ボランティアではないよと。

富田 はい。当然その代わり、彼らがちゃんと働いて成長できるように、しっかりケアしないといけません。でも、その「ケアをする」というのも考え方次第で、健常者の社員だって同じくケアはしますよね。
金銭的なもので言えば、例えば車椅子の子を雇うために昇降機をつけたりバリアフリー工事をするというのはコストが掛かります。でも、新卒や中途を募集して採用するにも、それと同じか下手したらもっと費用が掛かることだってあるでしょう。その点で言ったら、昇降機やバリアフリーは後々まで残る分、良いとも言えます。
他にも、例えば皆さん社員に残ってもらうために面談をして話を聞いたり、飲み会や社員旅行だってしますよね。そもそも我々はそういう「ケア」をいつもしているわけで、そのついでに障がい者の子が参加することだってできるわけです。その中で、鬱の子の様子が変だったら思い切り泣かせてあげたり、車椅子の子であれば遅い時間帯の勉強会では送ってあげられるようにしたりする。結局それも特別なことではなくて、かけるケアの種類が違うだけなんですよ

大澤 確かに、「特別なケア」をするのではなくて、「ケアの種類」がそれぞれで違うだけという感覚ですね。

「働きたいけど働く場所がない」を“戦力”に

大澤 最初に障がい者の方を雇用したきっかけはあるんですか?

富田 色々なものは後付けで、一番は募集しても人が来なかったことですね。費用を掛けても採用ができなくてもがいている内に、たまたまそんな話がポンと来て。それで、「働き辛い人に働きやすい環境を提供することで、戦力として雇用しよう」と決めたんです。いざそう決意してみると、「働きたいけど働く場所がない」という人は、障がい者でもシニアでもたくさんいるんですよ。すると、ある意味ブルーオーシャンの中で選んでいるみたいなもので、すぐに埋まったという感じです。

大澤 シニアの雇用もされているんですね。

富田 はい、一番上ですと69歳の方がいます。シニア雇用もきっかけは同じで、中途採用の企業説明会に何回出ても上手くいかなかったので、説明会の練習をしようと思って、たまたま出展料が無料だったシニア向けの合同企業説明会に出たんです。すると、いつもなら聞きに来るのは一桁、応募にいたっては1人いたら良い方なのに、その説明会では100名を超えるシニアの方が聞きにいらっしゃって、20~30名の応募が来たんです。初めてトランプで強いカードを選ぶような感じでした。

大澤 たくさんの人材から良い人を選べる、という。

富田 特に、シニアの雇用は肉体労働が多いので、内勤の事務作業は知名度がなくても人気だったというのもあり、すぐに戦力になるだろう人がゴロゴロいました。それで実際に雇用したところ、まず電話応対のあしらいが非常に上手いんです。うっかりすると若い社員がもたもたするような応対もさらっとこなしてくれる。苦手なことと言えばパソコン作業ですが、何名かに一人社員がついてフォローすればいいだけの話で、電話を受けて一般的な作業をこなしてくれればむしろ費用対効果も良いじゃんと。その上、たくさんの応募の中から良い人材を選べるわけです。これが他の企業と同じように主婦層のパートを狙っていると多分キツイんじゃないかと思いますね。

大澤 変な質問で恐縮なんですが、シニアの雇用というと、前職のやり方で固まっていて教え辛いのではないかなというイメージがあるんですが、その辺りはどうですか?

富田 社員として働くとなると、そういった経験やプライドといったものが出てくるかもしれませんね。うちではパートで働いてもらっていますので、彼ら自身もあくまでもアルバイトという感覚です。なので、そういうのは無いですね。周りが思うより、覚える側は意外と割り切っていますよ。

大澤 なるほど、そういうのは思い込みですね。

「ここで働こう」という思い

富田 障がい者雇用でもシニア雇用でも思うのは、問題は全て企業側にあるということです。企業側が一般的な労働形態の呪縛から逃れられないだけです。

大澤 従業員の方それぞれに合わせて働くスタイルを変えていくというのが、工夫が必要な部分ですね。

富田 工夫というよりも、作業分解ですね。作業を分解して、その人の能力とコストパフォーマンスに合った仕事をしてもらう。そうすることで、周りも「あの人はパートだし、自分たちとは待遇もやっている作業も違う」と理解してくれます。
私が意識しているのは、仕事のない時間をつくらないということですね。障がい者の子が、年金をもらっていてもなぜ働くかといったら、やはり社会との接点が必要なんです。もちろん全てが上手くいっているわけではないですが、実際に統合失調症の子も当社に来て半年で薬がもの凄く減ったんですよ。

大澤 それは本当に嬉しいですね。

富田 たまたまうちの会社に合ったのだと思いますが、それでも実際に仕事を通して社会と関わると改善するんですよね。だからこそ、作業分解でその人にあった仕事をしてもらうことが重要です。

大澤 無理なく働くことができて、尚且つちゃんと戦力として社会に関わることができるというのは、働く側にとっても嬉しいですよね。

富田 そうですね。面談しても彼らは健常者の子たちとは反応が全く違います。例えば若い社員は転職雑誌を見て他と給料や待遇を比べたりするでしょう。でも、変な言い方ですが、彼らは選択肢が少ない分、他人と比べないんです。だから発言も前向きだし、アルバイト感覚であっても「ここで頑張ろう」という思いで働いてくれる。そういった意味でも、「僕は何でみんな雇わないのかな?」と思っているんですけどね。

大澤 今お聞きしている業務だけでも、他の会社で真似できることが沢山あると思いました。

AI活用で更なる環境づくりを目指す

大澤 障がい者やシニアを雇用するようになって、今何か挑戦されていることってありますか?

富田 はい。実際に雇ってみて、シニアの方はやはりPC入力は遅いです。でも若い子にだって入力が遅い子はいますし、そんなのは週に3、4日働いていれば、徐々に速くなっていくものです。なので、そういった部分でのサポートも含めて、AIを活用しようとしているところです。

大澤 どういった活用になるんですか?

富田 自動応答システムといった一般的なAI機能を求めているのも間違いないですが、例えば言語をテキスト入力する音声認識なども同じように導入しようとやっています。

大澤 これからシニアは絶対に増えていきますからね。

富田 採用募集にお金を掛けるんだったら、欠けている能力を機械でサポートするような環境づくりにお金を掛けた方が結果として安いよなと。極端な話、そうすることで「若い人はいなくたって良いじゃん」といった環境もできますよね。

大澤 今後の人材市場を考えると、中小企業が大卒の人材を採れる可能性はほぼゼロになるというレポートもあるくらいです。それなら、これまでと同じ形に拘らず、今の内から自社にあった人材をフレキシブルに選ぶ。そのための環境づくりにコストをかけた方が長い目で見た時にプラスでもありますね。

プラットフォームゆい~全国を繋いで大きなうねりに!~

富田 それと、これはビジネスというより完全にライフワークなんですが、もう一つ始めていることがあります。

大澤 どういったことですか?


富田 現在、障がい者やシニア雇用を増やそうと思っても、それを相談する専門的な窓口がないんですよ。障がい者はまだ就労支援施設がありますが、シニアだとそれもないので、この組織に行けば良い」という正解がなくランダムな募集ができない。でも実際には、シニアや障がい者に限らず「働きたいけど働けない」という人はたくさんいるわけです。それなら、そういった人たちと人手が足りない企業をマッチングしたいと思い、仲間たちと「株式会社ゆい」という会社を立ち上げました。北海道でもそういった組織はポツポツとありますが、それぞれが単独でやるのではなく、ネットワークをつくって全国と結んでいきたいと考えています。一つのうねりにしていかないと解決しない問題だと思うんです。

大澤 人材と職もそうですし、どういう性質の方にどういう仕事を渡しているかというノウハウも溜まれば、全然違ってきますよね。

富田 これはよく出す例なんですが、それぞれが単独で就職支援をしていると、仕事の幅が非常に狭まるんです。例えば、知的障害者の子だけでアパートや市営住宅の共用部清掃を回すのはやはりリスクがありますよね。でも、その子たちを数名のグループにして、例えば親の介護で特定の時間しか働けないといった人たちと繋いでチームを作れたら、彼らだけで共用部清掃を回れるじゃないですか。
その為にも、これを軌道に乗せて全国と連携を取っていければ、何か新しいものが生まれるのではないかと考えています。例えば、雇用した社員が何か問題を起こしたら会社のコンプライアンスの問題になりますよね。それは健常者を雇うのでも同じで、仮に社用車を運転すれば事故を起こすリスクは必ずあります。でも、自動車保険があるから運転させることができる。それと同じで、こういう会社がたくさん増えて行けば、例えば派遣した人が1年以内に問題を起こしたら…というような少額保険なども成立するんですよ。

大澤 社会的な動きもそうですし、同時に保険も整備されていくことで、みんなでリスクシェアができたら良いですよね。

富田 どの会社の社長さんも「うちの仕事は特殊だから」と言いますが、実際に変わっているのは全体の2、3割で、7、8割は一緒なんですよ。その7、8割のところを作業分解すれば、こういった人達が働ける場所はいくらできると僕は思います。
障がい者の雇用で重要なのは、「この子はこうだからできない」というふうに結論付けるのではなく、「この子の能力をどうやって引っ張り出そう」と考えること。そして、これって健常者を雇用するのでも一緒なんです。むしろ健常者の子は見えない能力が主体になりますが、障がい者の子は目に見えるものを解決すれば良い。そうやって考えると、解決策っていくらでもあるかなと。

大澤 目に見えるから分かりやすい。名言ですね。今どの中小企業も人手が足りないと言っている中で、山口教授もそんな中小企業こそ多様な雇用を実現していかなくてはいけないと言っています。実際にこうして実践している企業のお話を聞いて、「あ、これは本当にそうだな」と感じました。今後もこういった「多様な雇用」を実現している会社の実例を、スモールサンで発信していきたいと思っています。
本日はありがとうございました。


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