瀧本智恵のシネマ・ノート　2016年10月号

「ハドソン川の奇跡」（原題：ＳＵＬＬＹ） 川に浮かんだ飛行機の両翼にずらっと並ぶ人たちの姿は目に焼きついている。8年前のニュースに接したときの爽快さを思い出す。けれど、あの事件がまさか映画になるとは思わなかった。 奇跡の裏側で2009年1月15日。155人を乗せたＵＳエアウェイズ1549便は、ニューヨーク・ラガーディア空港を離陸直後、雁の群れと衝突し両エンジンがストップ。高度はわずか2800フィート（約850メートル）。チェスリー・“サリー”・サレンバーガー機長は、ハドソン川への不時着を決断。一人の死者も出さず、まさに奇跡の生還だった。 だが、事故調査をする国家運輸安全委員会（ＮＴＳＢ）は、サリーの判断に疑いをかける...