瀧本智恵のシネマ・ノート 2024年12月号
『イル・ポスティーノ(原題:il postino)』 ある時代を生きた人々の記録 新しい世界との出会い 1950年代、イタリア・ナポリ沖合の小さな島。漁師の父と二人暮らしのマリオ(マッシモ・トロイージ)。漁師になる気はなく定職も持たない30前後の男。ある日、郵便局の求人を知り配達員として働き始める。配達先はただ一か所、世界的詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)が暮らす高台の家。コミュニストの彼は母国チリを追われ、妻を伴いこの島に亡命したのだ。 彼への手紙は女性からのものばかり。詩人になれば女にモテるのか―マリオは遠慮がちながらも少しずつ距離を縮めパブロに詩を教わるようになる。そんな奥手のマリオが恋に落ち...