瀧本智恵のシネマ・ノート 2024年10月号
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』 母の想い、母への想い ストーリー 宮城県の小さな港町に暮らす五十嵐家。塗装職人の陽介(今井彰人)・明子(忍足)は、ろう者の夫婦。二人に男の子が誕生。名前は大。聞こえる子だ。荒くれ者の祖父(でんでん)と祖母(烏丸せつこ)もいる五人家族の中で、愛情たっぷりにすくすくと育つ。手話は自然に身に付いた。 小学生になった大は、自分の母親が友達のお母さんと違うことを徐々に意識し始める。参観日のお知らせを母に渡さなかった。それを知って明子は大を喫茶店に誘う。「お母さんのこと、恥ずかしい?」。大は答えられない。 中学生の大(吉沢亮)。反抗期。いよいよ母が疎ましい。そして志望校に...