瀧本智恵のシネマ・ノート 2013年11月号
「ハンナ・アーレント」~考え続けることによってのみ人は強くなる。~世界を揺るがせた裁判レポート1960年代初頭。亡命しニューヨークに暮らすドイツ系ユダヤ人の哲学者ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)と夫のハインリヒ・ブリュッヒャー(アクセル・ミルベルク)はあるニュースに釘付となる。 ユダヤ人を強制収容所へ送った責任者、ナチス戦犯アドルフ・アイヒマンが、逃亡先アンルゼンチンでイスラエルの諜報部に逮捕されたと報じた。アーレントはイスラエルで行われる裁判の傍聴を希望し、ザ・ニューヨーカ誌に記事の執筆を申し出る。 妻が強制収容所での過酷な体験に再び傷つくことを心配するブリュッヒャーの反対をおして、ア...