瀧本智恵のシネマ・ノート 2024年5月号
『死刑台のメロディ(原題:SACCO E VANZETTI)』 国家は何を守ろうとしているのか 私は無実だ 1920年5月5日、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン。「赤狩り」が盛んな時代。靴職人のニコラ・サッコ(リカルド・クッチョーラ)と魚売りのバルトロメオ・ヴァンゼッティ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)は全く身に覚えのない強盗殺人事件の容疑者として警察に連行される。二人はその前日、当局による「イタリア労働組合」の一斉摘発の場から辛うじて逃げ出したのだが、密告者によって居場所を警察に突き止められたのだ。運悪く護身用の拳銃を所持していた。 裁判が始まる。検察が準備した証人は次々と目撃証言を口にする。これは裏取引や脅し...