瀧本智恵のシネマ・ノート 2013年2月号
「塀の中のジュリアス・シーザー」 (原題/Cesare deve morire)どこまでが演技かわからない。それはもう、熱演という言葉にはおさまらりきらないほどなのです。 囚人たちのシェイクスピア男たちが演じているのは、シェイクスピア劇「ジュリアス・シーザー」第5幕第5場。 ブルータスの死で幕を閉じる。観客の拍手が鳴り止まない。 舞台に整列した俳優たちは互いに抱き合い喜びを爆発させる。 その余韻冷めやらぬうち、制服の男たちが俳優を促す。「さあ終わりだ」「服を着て」。俳優たちは、レピッピ刑務所の監房へと帰ってゆく。 6ヶ月前へと遡り、場面はモノクロに変わる。 演劇実習の新年度が始まったことを告げる刑務所の責任者をぐるりと...