瀧本智恵のシネマ・ノート 2012年12月号
「東京家族」それでも、人間は後戻りしないと思う1953年公開の小津安二郎監督「東京物語」をモチーフに、2012年の東京の姿、日本の姿を描こうとしたのが本作「東京家族」である。 ストーリーの大筋は「東京物語」と同じ。ご存知の方も多いと思う。 瀬戸内の島から上京する老夫婦と3人の子供たちが主人公。それぞれの生活があり老親を構うことができない子供。次男の恋人の心遣い。 子供たちの家を転々としながら東京での数日間を過ごす夫婦だが、老妻が突然の病で帰らぬ人に。 親子・兄弟の関係、親の死、連れ合いを亡くした老後などなど。「あなたの物語」というキャッチコピーそのままに観る者は、親になったり子になったりしながら、スクリ...