瀧本智恵のシネマ・ノート　2012年5月号

「ル・アーブルの靴みがき」（原題／Le Havre）～カルヴァドスは、極上の香りを放つ。～きっかけはサンドウィッチ北フランス・ノルマンディー地方の港町、ル･アーブルの裏通り。 初老の男マルセル・マルクス（アンドレ・ウィリアム）。若い頃パリで自由気ままに暮らしていたが、今は靴磨きで細々と生計を立てている。献身的な妻アルレッティ（カティ・オウティネン）、愛犬ライカがいて、慎ましくも穏やかな日々を過ごし、それなりに幸せそうだ。 ある日、アルレッティは病に倒れ、そのまま長期入院。医者は、奇跡が起こるしかないほどの重病だと告げる。子供のまま大きくなったような夫に病名は伏せるよう、彼女は医者に懇願する。 そんなさ...