瀧本智恵のシネマ・ノート 2023年9月号
『春に散る』 生き切る こいつに賭ける 春。元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)。ボクシングをやめ渡米しホテル経営で成功を収め、40年ぶりの帰国。かつて所属した真拳ジムを訪れ、会長の真田令子(山口智子)と懐かしく言葉を交わす。 夏。荒川土手のそばに借りた広岡の一軒家に、同時代に共に汗を流した佐瀬健三(片岡鶴太郎)と藤原次郎(哀川翔)が集う。ボクシングジムの経営に失敗し落ちぶれていた佐瀬は仁一の誘いで山形から移り住んでいた。傷害事件を起こし刑務所から出所したばかりの次郎に、仁一は昔の寮生活のように3人で暮らそうと提案するが断られる。そこへ黒木翔吾(横浜流星)が突然訪ねてくる。数カ月前に居酒屋で絡んだあ...