瀧本智恵のシネマ・ノート 2023年7月号
『青いカフタンの仕立て屋』(英題:The Blue Caftan) あるがままでいい 愛することを恐れないで 舞台はモロッコ、サレの旧市街。民族衣装カフタンの仕立て職人ハリム(サーレフ・バクリ)。妻ミナ(ルブナ・アザバル)と小さな店を営む。父親から受け継いだ昔ながらの職人仕事は時間を要する。せっかちで高慢な客の文句にはミナが毅然とした態度で対応。店には青年ユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)が見習いとして働く。ハリムは彼を見込んで熱心に仕込む。 仲睦まじい夫婦のように見える二人の間には複雑な感情が潜む。ハリムはゲイなのだ。ミナはそのことを承知している。けれどもユーセフに対して師弟以上の眼差しを向ける夫に気...