瀧本智恵のシネマ・ノート 2023年5月号
銀河鉄道の父 父性の物語 父でありすぎる 明治29年、岩手県花巻市、質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)・妻イチ(坂井真紀)夫婦に長男誕生。政次郎の父・喜助(田中泯)は『賢治』と命名。政次郎の賢治への思いは子煩悩を超える。6歳になった賢治6歳、赤痢に罹病すると、「男子のやることではない」と怒る喜助の叱正をものともせず、自ら献身的な看病に勤しむ。とにかく賢治が愛おしくて堪らない。 盛岡の中学を卒業した賢治(菅田将暉)が寮生活を終えて帰ってきた。跡継ぎとしての修業を命じる政次郎に賢治は反発。質屋は農民から搾取していると言うのだ。激しい言い争いの末、渋々手伝いを始める賢治だが失敗ばかり。悩む兄に妹のトシ(...