瀧本智恵のシネマ・ノート 2023年1月号
『ケイコ 目を澄ませて』 この都会の片隅に ケイコの日常 東京の下町。小さなボクシングジムに所属するプロボクサーのケイコ(岸井ゆきの)は生まれつき耳が聞こえない。デビュー戦をKO勝利で飾り、第2試合を控えトレーニングに励む。トレーナーの松本(松浦慎一郎)とはホワイトボードとジェスチャーでやり取りする。ジムの会長(三浦友和)はそんな二人を静かに見守る。 試合当日。客席には実家から駆けつけた母や、東京で一緒に暮らす弟の聖司の姿もある。苦戦を強いられながらもケイコの判定勝ち。だがパンチを受けた顔は痛々しく心身へのダメージは大きかった。次の試合は2か月後。ケイコの中には迷いが生じていた。 そんな折、経営難や...