瀧本智恵のシネマ・ノート 2022年3月号
「金の糸」 蘇る亡霊 過去との和解 舞台はジョージアの首都トビリシの旧市街。作家エレネ(ナナ・ジョルジャネ)は、生まれた時から暮らす古い家で娘夫婦とひ孫の4人家族。今日は彼女の79歳の誕生日だが誰もが忘れている。それどころか娘は姑のミランダ(グランダ・ガブニア)をこの家に引き取ると言い出す。認知症の症状が出始め一人暮らしはさせておけないと。不愉快なエレネは自分が出ていくと叫ぶ。そんな中、一本の電話が入る。昔の恋人アルチル(ズラ・キプシゼ)からの誕生日祝い。朝まで通りでタンゴを踊った若き日々を懐かしむ。だが甘い想い出はソビエト連邦時代の激動の記憶でもあった。 ミランダが引っ越して来る。ソ連時代の政...