瀧本智恵のシネマ・ノート 2022年2月号
「ドライブ・マイ・カー」 赤いサーブが走る回復への道 自分と向き合う道のり 東京。ベッドの上で奇妙な話しをする女と男。演出家であり舞台俳優でもある家福(西島秀俊)と脚本家の妻・音(霧島れいか)。一人娘を幼くして亡くした二人はその後子供を持つこともなく、夫婦二人暮らし。真っ赤なサーブ900が家福の愛車だ。台詞を覚えるために妻が録音してくれたカセットテープ。それを聴きながら運転するのが彼のルーチンワーク。 妻の情事を知りながら家福は敢えて問い詰めない。二人で話し合うこともないまま、音はくも膜下出血で突然この世を去った。 2年後。広島。国際芸術祭で上演するチェーホフ劇「ワーニャ叔父さん」の演出家として招...