瀧本智恵のシネマ・ノート 2021年11月号
「モーリタニアン-黒塗りの記録-」 憎悪の波に抗う術はある 9.11後に起きていたこと 2001年の9.11米同時多発テロ事件の首謀者の一人として容疑をかけられたモハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)は、アフリカ北西部のモーリタニアからアメリカに連行され、キューバのグアンタナモ収容所に拘禁されていた。 2005年。人権派の弁護士ナンシー・ホランダ(ジョディ・フォスター)は、若手弁護士のテリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー)と2人で、モハメドゥと面会するためグアンタナモに向かう。裁判を一度も行わないままの拘束は不当だとしてアメリカ政府を訴えようと考えたのだ。 面会の場でも監視を恐れるモハメドゥの口は重い。ナ...