瀧本智恵のシネマ・ノート 2020年10月号
「ある画家の数奇な運命(英題:NEVER LOOK AWAY)」 私たちは問い続けなければならない 芸術が生まれるまで 1937年、ナチ政権下のドイツ。絵を描くことが好きなクルト少年は、芸術を愛する叔母エリザベス(ザスキア・ローゼンダール)を慕っていたが、統合失調症と診断された彼女は強制入院させられる。「目をそらさないで」とクルトに言い残して。優生思想の下で進む精神疾患者や障害者らの安楽死政策。患者の「選別」を担う婦人科医師で親衛隊のゼーハント教授(セバシュチャン・コッホ)によって、エリザベスはガス室へ送られた。 戦後、ドイツは東西に分断。東ドイツのドレスデンで美術学校に入学したクルト(トム・シリング)は、校内...