瀧本智恵のシネマ・ノート 2020年5月号
「さびしんぼう」 かけがえのない日々 ヒロキの青春 1985年、広島県尾道市。西願寺の一人息子、カメラが好きな井上ヒロキ(尾美としのり)は高校2年生。無口で仕事熱心な父(小林稔侍)、息子の学校の成績とピアノの練習に口うるさい母タツ子(藤田弓子)、少々ボケ気味の祖母(浦部粂子)と暮らす。悪友2人とつるみ、理科室の実験道具を使ってすき焼きを食べたり、校長室で飼われるオウムに変な歌を教えて自宅謹慎になったりと、青春真っただ中。ヒロキは近所の女子高に通う橘百合子(富田靖子)にほのかな恋心を抱き、寂しげな横顔から“さびしんぼう”と勝手に名づけカメラのズームレンズを使って遠くから眺めるのが楽しみ。 ある時、ヒロキ...